読後、美しい感動が胸に湧き上がってきます。
美しい。ただ美しい。
変に飾り立てる言葉なんて全部頭の中から吹き飛んでしまって、ああ、本当に美しい物語だったなぁという感想が湧き上がってきます。
このような感動に浸れることは、読者としてこの上ない喜びのように感じます。
この作品を読んでよかったなと心から思います。
本作はSFの世界観を持ちながら、艶やかな花々や不思議な少女の存在によって、幻想的な空気感に満ちています。
私達もまた宇宙の中で発達した科学技術を享受しながら生きているわけですが、『この世界が幻想ではない』と言い切る証拠はどこにもないわけであって、極論、私がこの作品に感動したことも、今、こうしてレビューを書いていることも、もしかしたら幻なのかもしれません。
異星に放り込まれ、頼りにしていた先輩も亡くなり、『文明らしい根拠』を失った世界において、主人公は自分の目に映るものを頼りに、己の感性に従って生きるしかなくなります。
彼が触れた美しい少女、彼が啜った甘い蜜、高濃度の酸素に慣れた体。
それらは全て、本当に現実のものだったのでしょうか。
そんな疑問が浮かびながらも、『現実でなくてもいいし、むしろ夢の話であっても全く構わない』そんなふわふわした心地のいい陶酔感に満たされます。
創作物を味わう醍醐味って、こういうところにあるのだと思います。
彼が辿った数奇な運命もろとも、何もかもが儚く美しく、読む人を深く惹き付ける作品だと思います。
このような作品に出会えてとても嬉しかったです。