転生したら殺戮ロボットだったから聞いてくれ

相田舞

第1話 日常の終わり

#1


僕は普通の高校生だ。僕はそう思っている。何の特徴もない、どこにでもいる男子高校生だ。僕は"普通の"日常を愛している。非日常など求めない。そういうのは映画やドラマの中で充分だ。朝起きて、学校に行って、終わったら塾に行って、帰って宿題して、テレビを見たら寝る。その繰り返し。それが好きだった。何の苦労もないし、その中で小さな幸せを見つけられる。素晴らしいことではないか。


今日はよく晴れているな。塾へ行く途中、そんな事を考えていた。今日は火曜日だからドラマ「はじめまして、未来のあなたです。」が放送される。先週は、主人公の隠し事に恋人が気付き始めるところで終わったんだよな。楽しみだな。


「喧嘩売ってんのか!ごらぁ」突然そんな怒声が聞こえた。すぐそこの裏路地からだ。ちょっと気になって覗いてみることにした。

声の主は長田だった。長田はいかにもガリ勉といった感じの青年を脅していた。「決してそんなわけじゃないんです。」「なら、有り金全部出せや。」長田は学校で最大の不良グループのリーダーで校内では有名だった。「これは帰りのバス代で…」「そんなん関係ぇねえんだよ。」俺が出せっつたら出すんだよ!」ガリ勉くん、可哀想に。僕は塾に行かなければいけないからその場を離れた。


まったく、お金ならバイトでもすればいいのに。何故他人から奪う必要があるのだろう、争う必要があるんだろう。喧嘩をしたって、争ったって、ただ、自分のものを失うだけだ。この世界から争いなんて無くなればいいのに。そうすれば僕たちはなにも失うものはないのに。


そんな事を考えながら歩いていると、いつも通るパン屋の前まできた。今日もパンのいい匂いがする。たまにここでメロンパンを買ってから塾に行くが、今日はお小遣いが少ないのでなしだ。パン屋を通りすぎようとした時、悲鳴が聞こえた。


前を見ると、トラックが蛇行運転していた。ふらふらと車線を横切りながらこちらへ向かってくる。この調子じゃどこかに衝突するのは確実だろう。トラックが迫ってくる。このままだと向こうの歩道に突っ込むだろう。そう思った瞬間、トラックは向きを変えた。僕は呆然とした。足がすくんで動かなかった。トラックが向きを変えてから、全てがスローモーションのように感じた。そして…


僕の体はぺしゃんこになった。




「異常を検出:cpu演算回路に異常が検出されました。」なんだ、これは…?声が聞こえるでも、文字が見えるでもない、考え事のように頭の中に言葉が出てくる。「異常を報告します。解析データを送信中……」「送信を中止。」演算回路?異常?何なんだこれは…。


意識がはっきりし始め、目が見えるようになってきた。そして、僕は見知らぬ場所にいることに気づいた。ここは何処なんだ!?

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転生したら殺戮ロボットだったから聞いてくれ 相田舞 @Aimai-Sekai

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