木取木成

木乃伊取りが木乃伊になる、ということわざを初めて聞いた時、

「ミイラ取りって仕事があるのか!」

と思った人、いると思います。きっと「公認木乃伊取士」みたいな資格とかあって、ミイラを捕まえて高く売るのだと。しかし危険な仕事で一歩間違えたら自分がミイラにされるのだと。よくよく考えたら罰当たりな仕事だなと。公認とかあるわけないなと。その前に誰がミイラ買うんだよ!と。

ところがです。そんな仕事が実在するのです。この作品の中で頭脳明晰な主人公の立哉(笑いのセンスはない)は毎回、持ち前の強靭な精神力によってすんでのところでミイラ化を回避し、事なきを得ます。が、残念ながらこの立哉、その言動が鼻につくというか徳がないというかイマイチ感情移入しにくい。読者的にはむしろ「早くお前がミイラになってしまえ!」と思わざるを得ないという。「シン・ゴジラ」をゴジラ目線で観ることのできるような方にはきっとこの気持ちを共感いただける、そんなストーリーであります。