秋乃は立哉を笑わせたい 第3笑

如月 仁成

予告編 ごみゼロの日


 ~ 五月三十日(土) ごみゼロの日 ~



 凜々花。ハガキ来てるぞ。


 ばあちゃんから?


 婆ちゃんから来んのはもうちょい先だ。


 そっかまだかー! 凜々花、めっちゃ楽しみ! お中元!


 暑中見舞いな。間違った時期に届くからそう呼ぶのも微妙だが。


 間違ってんの? 暑中見舞いの日だから合ってんじゃね?


 暑中見舞いの日は、専用はがき売り始めた日なんだよ。


 んじゃあ、普通に夏休みの方が正解?


 それじゃ遅いんだけど。……いやそれよりお前、この部屋……。


 へ? ……ああ、ちっと汚い件?


 中身が入ってるゴミ袋が転がってる部屋をちっと汚いとは言わん。


 じゃあ、ほんのり汚い?


 踏んで砕けたポテチが転がってる部屋をほんのり汚いとは言わん。


 そりゃびっくり。まさかとは思ってたけど……。


 ああ、そのまさかだ。


 ここが綺麗な部屋オブザイヤーだったとは。


 ベストずうずニストだ。



 こんな図々しいやつ見た事ねえ。

 それよりも、だ。

 なんとかしねえと友達すら呼べないんじゃねえのか?



 そのうちダニとか出るぞ。あいつらゴミが餌なんだから。


 え? じゃあ、早く出て欲しい!


 なに言ってんの?


 そしたら掃除せんでもゴミが綺麗さっぱりなくなる!


 神様、ちょっと失敗してお前の事天才にし過ぎちゃったんだな。


 凜々花、ノーベルモンドセレクション賞取れる?


 ああ、新人王にノミネートだ。しかしここに春姫ちゃん入りてえとは思わねえだろうな。


 おにいもそう思うんだ。


 お前もそう思ってるんなら何とかしろ。


 凜々花はそんなこと思ってないよ?


 は? どういうこと?


 廊下で立ったまんまだった。


 まじか、呼んだのか。嫌われるぞ?


 そんなことない。今後一生ハルキーの家でだけ遊ぶんならずっと友達だって言ってくれたから。


 最後通告じゃねえか。友達も呼べねえし。彼氏も相当先だろうな。


 それは困っちゃう!


 そんな早く彼氏作られたら俺が困っちゃうし。親父は泣いちゃうから。


 おにい! 仲とりもって!


 誰と? 俺の知ってるやつ?


 舞浜ちゃん!



 まだ俺に。

 ジェンダーフリーは理解できないことを知った日になった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る