第3話 一軍を求める

「これから、演劇オーディションを開催します。中に入って。」


 廊下に居たものは演劇ホールの中へ入るとそこはプロが使うような巨大な舞台に観客席は千を超している。


「みなさーん、席へお座りくださーい!」


 先輩が生徒を誘導している。生徒が席に座ると先程の女が。


「よし、では貴様から行こう。こっちへこい」

「はい」


 呼ばれたのは犬飼で、舞台裏に連れて行かれた。すると舞台裏から声が漏れて聞こえてきた。


「名前と出身校を答えろ。」

「犬飼啓。絢桜中学校出身です」

「犬飼ってことは犬飼グループの子か?」

「はい。そうです!」

「そうか、次に何故この部にきた?」

「生きがいを追い求めてきました!!」

「生きがいとは?」

「ご主人様です!」

「…誰だそれは」

園南寺えんなんじ 琉奈るな先輩です!」


と答えたら部長かもしれない人がそっぽを向いて顔をしかめて小声で


「変な奴に好かれたものだな。妹も」

といったが、犬飼には聞こえていない。


「ん?なんです?」

「いや、なんでもない。犬飼、貴様は何か能力は持ってるか?」


「犬の能力を持っています。」


 そう発言すると部長と思われる人が密かに笑い不気味な顔を見せこう命じた。


「なるほど、犬飼。貴様の配属先が決まった喜べ第三軍紅の演劇部だ!」


「そこに園南寺先輩はいるんですか?」

「私も園南寺だが、まぁお前が求めている女子はそこにいる。」


 犬飼の目がきらきらと宝石の様に輝き出しそのままルンルンと多目的を去っていった。


「どんどんいきますよーー!次は君!」

 指を刺した方向には飯田がいた。

遂に私の番がきた。ここで答えを間違えれば第三軍送りにされる。それだけはどうしても避けたい、今までの苦労を水と泡にさせたくない。


 席を立ち、舞台裏に行くとパイプ椅子と1つの机を挟んでもう一つのパイプ椅子に緋色の鳥の部長が腰掛けている。

 それはまさに面接官と受験者の構図である。


「名前と出身校を」

「飯田華麗です。出身校は龍河谷中学校です。」

「この部にきた理由は?」

「私は小さい頃から演劇が好きで習っていました。そしてこの演劇でトップクラスを誇る紅将ヶ学園の緋色の鳥で更に高みを目指したいと思ったからです。」

「次に能力は何か持っているか?」

「短期記憶です。」

「それ以外に他は?」

「ないです」

「では、どの程度記憶できる?」

「教科書や国語辞典などは全て覚えられます。」

「なるほど、ありがとう。君の配属先は…」


短いオーディションに不安を抱き冷や汗をかきながら部長の言葉を聞いた。


「紅の演劇だ。」


私はその言葉に意を唱えた。

「そ、そんな私の何処が悪かったんですか!?」

「聞きたいのか?」

「もちろんです!」

「君は演劇に対する情熱は凄く伝わってきた。だが、それだけに過ぎない。私は君の実力がわかる。本当に頑張ってきたのだろうね。だけどそれ以上に頑張っていれば緋色の鳥に入れた。」


「私の頑張りが足りなかった…」

「そうだ。これで君のオーディションは終わりだ下がりなさい。」


「まって!まだ」

何かを言いかけた後に

「副部長、連れて行け」

「はーい。可哀想だけど、これ以上言ってもよ」




 飯田は副部長に舞台裏から下ろされた。色んな意味で…


「よかったんですか、あんなこと言って」

「これで諦めるようなら、それまでのこと」

「鬼畜ですね」

「次女だからな、次呼んできてくれる?」

「はーい!」


 場面はかわり、しょんぼりしながら退室前に副部長からもらった一つの紙をみる。

「《演劇練習室に行くこと》か。」


 そこはたぶん第三軍紅の演劇部の練習室。悔しい、ここまでやってきた努力を踏み躙られ後ろ髪を引かれる思いだ。紙に一粒の水が紙を濡らし次第にその紙は水浸しになって握りしめた。


「私はあのバカ犬と同じだって、誰が認めるもんか。絶対に見返してやる私を第三軍に入れたことを後悔させてやる!!」


 長袖で涙拭い唇を噛み締める。目の下は赤く染まって涙の跡が残っていながら紙に記された場所へ向かった。そこである一人の男が立ち止まっていた。そう犬飼不愉快がおどおどしながら扉の前に立っていた。


 その姿は不審者そのもので話しかけずにそのまま入ろうかともおもったのだが、それはそれで悪い気がして結局話しかける。


「どうした」

「いや、ここであってるんか気になってもし違ったらどうしようって」

「あってるからどいて」


 犬飼をおしどけ引き戸を開けると二人の部員がいた。

「失礼しまっ..」


 部室に入ろうとすると犬飼が一人の女子部員にめがけて飛びついていった。


「琉奈せんぱ〜い!!」

 飛びつかれそうになっている部員が犬飼に綺麗な回し蹴りをくらわせると壁に激突。



 壁に激突した犬飼をよそに部員は自己紹介をする。


「ようこそ、紅の演劇部へ。私は副部長の園南寺琉奈だ。よろしく」


 犬飼のことを無かったことにしたこの女性は眉目秀麗で凛々しい瞳に腰まである長髪。首にチョーカーをしてある。


「よろしくお願いします。って確か園南寺って緋色の鳥でもいたような。」


「あぁ、緋色の鳥にいるのは私の姉だ。次女で私が三女、そして福神ノ学院に長女の三姉妹だ。話がそれたが、こっちが部長の西野にしの由衣ゆい


 クッキーを加えたゆるふわシュシュをつけている眼鏡をかけた人がこちらにきた。


「よろしくねぇ」

「で、そちらの番だ。」

「あ、はい。1年1組普通科演劇コースの飯田華麗です。よろしくお願いします。」


「よろしく。それでそこの飛びついてきた奴、名前は」


「同じく、1年1組普通科演劇コース犬飼啓です。よろしくお願いします。」


「お前はまずその体制どうにかしろ」


 壁にぶつかっていた犬飼は起き上がり服についたほこりを叩いてはたいて落とした。


「今年は二人なのねぇ、もう少しほしいけど仕方ないねぇ」


「多分、他にも来ますよ。人の匂いがこちらに向かってきてます」


 すると、爆発に近い音をたてて引き戸が開いて一人の短髪少女が入ってきた。


「我が君主の下令よりこの約束の地に馳せ参じた!!我が名は柊木朱鳥.天命より授かりし名は真龍・ミリエル!」


 腕を前に出して左手を腰に置いてポーズをとって、自己紹介を始めたが一同静まりかえり、無音が続く。


「フハハ!恐ろしくて声も出せぬか!愚かどもめ!」

それでも無言は続く。

「な、なにか喋って…」

「いや、いきなりすぎて追いつけなかった。まぁ、よろしく私は園南寺琉奈。こっちが西野由衣」

「かわいいねぇ。食べちゃいたいくらい」

「かわいいとか、いうでない!!我は漢だ」

「お前、男だったのか。」

「お前ではない!柊木朱鳥だ!!」

「でもかわいいからいっかぁ」


                  第三話 平凡を求める!! 完

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この演劇部に何かを求めるなら青春を求める!!+α 文月紅凛 @kiharaRIN

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