二話 とある街で その2

 酒場から出た青年は、残りの持ち金を確認しながら宿屋の看板を探した。

 宿屋を探している間、青年は男から聞いた話を思い出していた。

 そして、男が言った「無理だ」という言葉の意味。普通に空に浮いてるから無理という意味かと思ったが男の言い方からそれだけではないことは、確実だった。

 男は、あの島について何か知っている。

 あのとき食い下がってでも聞いておくべきだったかと少し後悔をした。

 しばらく歩き回って一軒、宿を見つけた。

 青年が宿を見つけた時にはつい先程まで人で賑わっていたのが、今はただ人の足音が響いているだけでおり、かなり長い間宿を探し歩き回っていたことがわかった。

 なぜこれほど時間が掛かったのか、単にこの街に宿屋が少ない訳ではなく青年が宿を探しはじめたのが遅かった為に、ほとんどの宿が他の旅人でいっぱいだったのだ。

「あの、泊まれますか?」

「ああ、すまないね今日はもう開いている部屋がないんだ」

 この会話をなんど繰り返したことか、軽く十回は繰り返していたなと思いながら、

受付の女の子から部屋のカギを貰うとカギに書かれた番号の部屋へと向かった。

 扉を開け、部屋の中に入ると、ベッドと机と椅子、それと大きな窓がありそこから月の光と街灯が部屋を照らしていた。

「疲れた~」

 青年は、部屋に入ると腰に付けていたウエストポーチやら色々な物を床にドスドスと落としながらそのままベッドへ向かいバタンッという音を立てながら倒れ込むと、仰向けになって天井をぼおっと見つめた。

「ドラゴン……か、やっぱこの街に来て正解だったかもな」

 青年は、体を起こすと床に落ちているウエストポーチを拾うと、中からこの街周辺について描かれた地図を取り出してベッドの上に広げた。

「島まで行けなくても、その下には行けるはずだから……とりあえずはここを目指すか」

 そう言うと地図をウエストポーチにしまい、他の荷物を拾って足りない物の確認をしてからベッドに横になり眠りについた。



 まだ朝日が昇り始める少し前。青年は、目を覚ました。青年は、ベッドの上で軽く伸びをしてから体を起こすと昨日風呂に入っていなかったことに気づき、風呂の場所を聞くため受付カウンターまで向かった。

 青年は、湯船につかりながらまた、昨日男に言われた言葉の意味を考えていた。しかし、意味が理解できる訳もなく最終的には、男にもう一回話を聞きに行く、という風になっただけだった。

 風呂から上がると直ぐに荷物をまとめて部屋を出るとカギを掛け、受付にいる少女にカギを返すと宿屋を後にした。

 青年が宿屋からでる頃には既に陽が昇っており、辺りには大勢の人であふれかえっていた。

「人多いな」

 などと呟きながら道の端っこを歩いて酒場まで向かった。

「やっぱり、いないか……」

 酒場に着いた青年は、キョロキョロと店内を見回しながら男を探した。だが、男は見つからず、カウンター席を見てもそれらしい人物は見つからなかった。青年は、「はあ……」と小さくため息を着きながら酒場から出てくると、足りない物を買い足したり、いらない物を売るために道の端っこを歩いて雑貨屋に向かった。

「まあ、こんなもんかな」

 一通り買うものを買い、売るものを売った青年は、道の端を歩きながら片手に地図を持って改めて行く場所を確認していると、ふと、建物と建物の間にある路地に視線がいった。そして、次の瞬間には青年は、その路地に入って奥へと進んでいた。

 進めば進むほど通りから離れていく。左右の建物が陽の光を遮りあたりが薄暗くなる。

 しばらく歩いていると、行き止まりに当たった。

 なにかに呼ばれたような気がして来てみたが、結局のところ何もなかった。

「行き止まりか……しょうがない戻るか」

 青年がそう呟き、来た道を戻るために後ろに向き直った時だった。青年は、そこにいるものを見た瞬間、距離をとるために後ろに軽く跳躍した。

 そこに居たのは青年と同い年かそれより一個下ぐらいの少女だった。

 少女は、ボロボロの衣服にぼさぼさの白色の髪。そして、透き通るような美しい青色の瞳。いきなりだったため驚いて距離をとったが、特に凶器の類は持ってるようには見えなかったし、大袈裟だったなと思い若干警戒はしつつも声を掛けようとしたとき、バタンッという音を立てて昨日の青年と同じように地面に倒れ込んだ。

 

 






 

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