第1話 暗闇から
―――暗闇で声が聴こえる。誰かが泣いてる。
あれ自分の声だったか。いや正確には心から聞こえる。小さな声で今にも消えてしまいそうな程に儚げな声色だ。聞き覚えが無い。何も思い出せない。
「―――きみは誰?俺の心から出てってよ」
青白い肌に青色の瞳。言葉で言い表すことができないような綺麗な透明色に光る羽衣のような着物を着た少女に問う。
その声で存在に気づいたのか、少女は遠い景色を見るような目で見つめる。
その途端、思い出したかのように恐怖が込み上げる。
全身が逃げろと信号を出し。手足の震えが止まらない。
強張る脚をがむしゃらに動かし、少女から距離を取る。
距離をとってもとっても、気配が背中にしがみつき離れようとしない。
青い目の少女から逃げる為暗い、ひたすら暗い道をどこかも分からず走り続けるような感覚が何日も続いた。
***
鉄のドアのように重く閉じ切った目蓋を開け、微睡みを抜ける。
立とうとするが、体は石のように重く、全身痺れて動かない。
一度も見たことのないはずの天井が始めに目に入った。暫く天井を眺め整理をつけてみても、やはり見たことがなかった。
暗闇と関係があるのか。少女から逃げ切れたのか。そして、
―――僕は誰なのか
そんなことに思考を巡らせていると上半身の痺れが引いていた。
体の状態を起こし、窓に目を向ける。やや強めの雨が降っており、地面を打ち付ける音が心地よかった。
「―――うぁっっっっ!」
体の感覚が戻ってきたのか、全身に声が漏れるほどの激痛が走った。とっさに体を押さえた右手には血が付着しており、体には包帯が大量に巻かれていることに気づいた。
「一体なんなんだよこの血はっ!どうなってんだ俺の体は・・・」
勢い余って手で布団を叩こうとしたその時、掛け布団が少し膨らんでいることに気づいた。
布団の中では、狐の耳がついた小さな子が寝息を立てていた。
蒼き一閃の妖刀使い ミヤセ @kkk3114224
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