蒼き一閃の妖刀使い

ミヤセ

プロローグ

 

月が一番大きく見える刻限、一人の少年が異国の者に追われていた。



「子兎の如く逃げ足の早い者よ、逃げてもその刀は我のものぞよ」


髪も目も、暗闇の中で一際異彩を放つ赤色をした男は投げかける。

「嫌だというのなら戦えばいいものを」

そう言って、昼間のような光に包まれ、後ろにいたはずの男が現れる。

「――刀術っ!?」

「さぁ、刀を抜け。首が焼けるぞ」

男の太陽のような光りを放つ刀に、燃え盛る業火がまとわりつくように覆う。

「この刀は、そう安々と抜けないようになってんだよっ!」


「ならば自らのその力不足を恨め」


鉄をも溶かす程の熱気と殺意の籠った刀身が、数分の狂いもなく振り下ろされる。

「――ッ!」

咄嗟に鞘に収めたままの刀で受ける。

刀が鞘ごと折れる程の威力で体は宙を舞い、数メートル先まで吹き飛ばされる。


「抜刀無しで我が刀術を受けてなおまだ息があるとはな。さすがの選抜の生き残りとやらか」


殺気立った赤い目をした男の頬には''日''の字が浮かび上がっている。紛れもない日ノ国刀術の使い手の証があった。

「夜明けが近い――悪いがもう終いだ」

静かな怒りを感じる声が聞こえ、意識が遠のいていった。



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