第7話 調伏方法
数時間仮眠したあと夕飯を食べるやいなや、まだ気構えすらできてないというのにジャージに着替えさせられ、リビングに集合する。
そこには準備万端であろう式神さんが、仁王立ちで待っていた。
「では、まず
「え? 今!? ここで!??」
現場で教えてもらうのかと思いきや、まさか事前練習とは思わず、驚いて式神さんを見ればスン、と一瞬でテンションが下がったのを感じる。
……え、何? 俺なんかまた
「えぇ、誰とは申しませんが、どなたかの霊力がないせいで、私は一緒に行けませんから」
「それ、明らかに俺のせいだって言ってるよね……」
すぐさまギロリと冷めたい目で見られる。
途端に背筋にヒヤリとした緊張感が走り、チキンである俺は自分の発言をうやむやにするべく、すぐさま「すみません」と謝ってしまう。
……あれ、おかしいな、式神さんって俺の使役してる式神なはずなのに。
だが、うん、ここで彼女に逆らってはいけない。
そもそも式神さんには勝てない、と本能で悟ってしまったのだから仕方がない。
平和的解決のためにも、ここは俺が引き下がるしかないのだ。
「……とにかく、説明します。まず、調伏するためにはそれなりに対象物を攻撃する必要があります」
「攻撃? え、物理ってこと?」
「えぇ、陰陽師なら霊力が備わってますので、物理攻撃も通ります。ですが、もちろん霊力と攻撃力はイコールですので」
うん?
今、霊力と攻撃力がイコールって言ってたか?
「ちょちょちょ、ちょっと待って。それって、まだ霊力が大してない俺が殴っても……」
「せいぜい猫パンチくらいの威力かと」
「ね、猫、パンチ……!」
頭の中で猫が駆け回る。
猫、猫パンチ……にゃーん。
可愛らしい猫が俺にげしげしと前脚でパンチを入れてくるところを想像する。可愛い。
って、そうじゃなくて!
それって、もしかして、もしかしなくても……。
「だいぶ弱い?」
「と、思っていただいて問題ないかと」
思わず、がくーっと膝から崩れる。日々あれだけ基礎体力をつけて霊力を上げるということで、筋トレやらランニングやら努力してきたというのに、それがまさかの猫パンチ……!!
というか、そもそもの俺の霊力は猫パンチ以下だったのか……
二重の意味でショックを受ける。
「ただ、霊力が弱いからと言って全く歯が立たないということはありません」
「へ? どういうこと」
「頭を使うのです」
「あ、頭……?」
頭って、頭突きとかしろってこと?いや、俺は別段頭固くないしなぁ……。
なんて考えてたら、思考を読まれてたのか式神さんに物凄く白い目で見られる。
「そっちの頭じゃありません。考えるほうです。ヘッドではなく、アイデアのほうです」
「あ、あー、そっちね! なるほど!」
あからさまに、こいつ大丈夫か? って顔をされる。酷い。
ちょっとボケてたかもしれないが、たまにはそういうこともある。人間だもの。たまには、ね……!
「とにかく、知恵を使って戦ってください。押してもダメなら引いてみるとか」
「ふむふむ……」
「本当に、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。大怪我するとか、死ぬ危険性とかはないんでしょ?」
「……」
「え、何でそこで黙るの?」
若干の不安を覚えながら、式神さんを見るが、にっこりと微笑まれる。
何これ、恐いんですけど。
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