美しい、穏やかな諦念。

非常に好みの短編でした。

この作品に登場する人物は、「理不尽」に対して怒ったり、抗ったり、必要以上に悲しんだりしません。
それは「魔女」が自分の社会的立ち位置を経験上正しく把握していたり、主人公の騎士が戦場で死線を潜った経験から突然の不幸というものはありうると認識しているからだったりするわけですがーー彼らは理不尽を受け入れ、その上で自分にとって大切なもの、ことを愛します。

凡百の物語であれば、理不尽に対して憤り、それを強いてくるものと戦います。もしくはそれから逃れ、逃避行を選ぶでしょう。
それはドラマチックですが、ある点ではリアルではありません。
登場人物の思いや性格、確かな息遣いが感じられる本作は素晴らしいと思います。

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