共産党体制下の国家に生きる姉妹のお話。
姉のレナが父を売り渡す所から物語は唐突に始まる。
理由不明だが身内を保安局に突き出したことで、その冷酷さと共産党への忠誠を買われたレナ。彼女は養成学校に入り、さらにさまざまな巡り合わせを経て立身出世し、共産党独裁体制の国家で体制側として長じていく。
一方で、妹のマヤは身内の密告という失意に打ちのめされたが、やがてそこから立ち上がり学生運動へと身を投じていく。彼女もまた活動の中で数奇な巡りあわせを経て頭角を現し、国の民主化運動の中心メンバーとなっていく。
共産党独裁体制を維持したい姉。
それを打倒して自由を手に入れたい妹。
二人の道は分かたれた。次に交わる時、二人のどちらかの道は途絶えるかもしれない。
暗い世情に血なまぐさい因縁。どうしても悲劇的な結末しか見えない。
はたして姉妹はどうなってしまうのか……。
今や他の道を歩む二人を繋ぐのは、ドモヴォーイという妖精。家を守護するという小人ははたして、姉妹の絆を取り戻すことができるのか。それとも見守ることしかできないのか。
史実を元にした冷酷な舞台設定に、これまた伝承を元にしたファンタジーを合わせた異色のダークファンタジーサスペンス。いよいよ、二人の軋轢が深まってきた今が読み時。これはほんと、ちょっと他にはない作品なので、気になった方は要チェックです。