身体の欠損を機械でまかなえるほどに医療技術が進んだ世界。
野菊は学園祭のダンスパーティで、真っ黒い円筒形の機械頭を持つユウヒと知り合う。男性が苦手な野菊だがユウヒとは穏やかな関係を築き、自分でも気付かぬままに彼に惹かれていく。しかし野菊とユウヒがそれぞれに抱える過去が、現在の彼らにも重くのしかかる。苦しい過去を乗り越え、ふたりの想いが繫がることはあるのだろうか?
ダンスフロアの雰囲気、交わされる会話。全てに躍動感があってすごくおしゃれ。「洋画を観ているよう」という他の方のレビューに、1話を読んだだけで激しく頷かざるをえませんでした。
ユウヒの台詞がいちいち格好良くて。顔がないイケメンがここにいますよ!顔の造作など関係無い、野菊の見る目がありすぎるー!
……などという感激と大興奮も束の間。なぜか野菊に絡んでくるクリストファーとも関連し、彼らの過去が明らかになった瞬間の衝撃たるや。ここから回復できるの?本気で不安しかなかったですが、それまでの何気ない台詞などをしっかり回収しながら、見事に収まっていくのです。獣道。
野菊とユウヒの恋ももちろんですが、もう一つ見どころは野菊と友人たちとの友情。一見頼りなさげな野菊だけど実は芯は強い。そういうところもわかりあった上で、心配し助けあう関係性がすごく良かったです。それに女の子たちがわちゃわちゃしてるのってすっごく可愛い!
素敵な物語に触れられるのは本当に楽しくて嬉しい。ぜひ味わってみてくださいね。
近い未来、人は欠けた体の一部を機械で補う。耳や肺、さらには頭に至るまで。
ただどんなに機械が体を補ってくれようとも、人の心は変わらず多感なティーンエイジャーならなおのこと。
限られた場所、人という箱の中で精一杯生きる様を、いつかその箱が誰かに開かれる日を夢見る希望を抱く一人の少女の青春模様。
私が物語の中で印象に残った言葉として「ありがとうも、ごめんなさいも、一緒に言える言葉が、あればいいのに。」というのがありました。
この曖昧でなんとも表現しづらい感じが、まさに青春だなと思います。
人は外見がどんなに変わろうとも本質は人であり、友情や恋愛というものは存在し続けるのだろうと感じさせられました。
物語の中で感情の変化が静かに語られ、それでいて大きな変化が生まれる。読んでいて続きが気になる作品でした。
近未来の恋愛事情をぜひ覗いて見てください。