戦場の冷凍バナーナ

破隕

戦場の冷凍バナーナ

「お前、なにしてんの?」

「なにって、FPSナイフ縛りだけど」

「いや、違うんよ。ナイフ縛り中にバナナを持ってるやつがいるんよ、目の前に」

 

「これ冷凍バナーナなんだけど」

「別に冷凍かどうかは大事じゃないんよ。バナナの発音おかしいし」

「でも、お前よりキル数多いぜ?」

「それもそれで問題なんよ。ナイフに勝るバナナがあってはいけないんよ、このゲームのシステム上」

 

「でもこれ、公式が出してる課金武器だぜ?」

「公式も公式で頭おかしいんよ。サブ武器にバナナを追加するのはどう考えてもおかしいんよ」

「コラボイベントだしその位はいいだろ」

「百歩譲ってそれはいいとしても、使い方が間違ってるんよ」

「あってるだろ」

 

「それ、回復アイテムなんよ。ナイフの代わりに装備できるネタ的回復アイテムなんよ」

「それがどうした?」

 

「使い方が圧倒的に間違っとるんよ。回復アイテムが凶器と化してるやん」

「わざわざ雪マップで凍らせてきたんだよ。固くて食えねぇわ」

「そこまでの労力使ってまで冷凍バナナで戦う必要性ある? 俺はないと思うで?」

 

「なんつーか、馴染むんだよ」

「理解が追いつかんて。この戦場で冷凍バナナが手に馴染むなんて、本来あってはならないんよ」

 

「リアルで毎朝握ってるからかなぁ」

「下ネタなん? 毎朝握る、手に馴染んだバナナはアウトじゃない?」

「ガチの冷凍バナーナね」

 

「……え?」

「だから、ガチの冷凍バナーナね」

 

「どうゆう事? なんのために冷凍バナナを毎朝握ってるの?」

「スムージー」

「……意識高い系インスタグラマーやん。ゴリゴリに映えを狙いに行ってるやん」

「んや、ただの健康志向よ」

「じゃあ、インスタのフォロワー数は?」

「10万ちょい」

「ガチ勢やん。その数は本物のソレやん」

「趣味みたいなもんだけどね」

「趣味で10万超えるのはえぐいって」

「それもバナーナの力やで」

 

「話戻すけど、バナナの攻撃力ってどんなもんなん?」

「ナイフと同じだよ」

「だったらナイフでよくない? あえて雪マップで凍らせる労力無駄じゃない?」

「色々使い道あるで」

 

「……例えば?」

「溶けたら食べれる」

「それが本来の使い方なんよ」

 

「食べた後も皮で無双できるよ」

「どうゆう事?」

 

「まぁ見てな」

「え、? なんで食べたん?」

「んしょッ!」

「は? え、投げた!? そんな原始的な方法に引っかかるヤツおる?」

「待てって」


「……ほんとに引っかかった!?」

「言ったろ?」


「死んだやん!? アイツ余裕で死んだやん?」

「バナーナの皮って凍らせると当たり判定でるんやで」

「こけて死ぬとか可哀想すぎやん」


「すごいだろ?」

「んや、ドヤ顔かますなや」


 (FPSってなんだっけ?)

 僕は考えるのをやめた。

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