流星群は微笑えない!

水定ゆう

#.0 流星の幕開け〜the fast shooting star〜

 「本当にやるんですか?」


 私はそう告げた。

 すると副部長だと名乗る先輩は「ああ、君の実力見せてもらおう」と宣言して、訳の分からないまま初心者の私はをすることとなった。


 異能力が存在し、それらがスポーツに反映された世界で特にその力が発揮されるものがこのSFT。通称、スーパー・ファンタジー・テニスである。

 そして私はそのうちの一人、異能力者としてここに立たされているのだ。


 しかし私はそんな事どうでもいい。

 何故なら、そもそもの話、私はテニスをしたことがないのだ。だから当然勝てるわけもない。他、半端強引だったが何ということか、今のところは同格と言って過言ではない。


 (早く負けて、帰りたいなー。ああ、何でこんなことに……)


 と、とほほな気分で閑古鳥がなく。

 そして私はそんな中でとんでもない状況に直面した。周りには人だかりが作られ、私達に注目する。

 そして副部長と名乗る先輩は、こう告げた。


 「ここからが本番だ。君の力、私に見せてもらおう……《鎌鼬かまいたち》!」


 そう言って打つサーブは異次元の領域だった。

 まるでついていけない。その速さはまるで風を切って進むかのように風を味方につけた弾丸だ。

 その威圧感と速さ、それから追いつかないほどの風圧これが先輩の能力。

 風間刃。能力は、『風を操る』こと。

 しかしだからと言って、勝ちたいとは思わない。ここで負けていい。

 そう思ったときだ。


 「頑張って、流ちゃん!」


 という聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

 そこにいたのは幼少期の幼馴染で高校で再開し同じクラスになった友達、桜井彩さくらいいろだった。

 彼女も能力者で有り、そしてテニス部に所属している。そんな彼女がのここにいる理由はそれしかなかったが、何故先輩を応援しないのか?私よりも断然可愛くて、おしとやかな性格の彼女がこんなに熱くなって、私を応援してくれているのだ。それだけで胸の奥から勇気が湧いてくる。力となって溢れるそれを、私は解放するかのようにギリギリになった点差を逆転すべく、アウェイの中でがむしゃらになった。


 「やっと本気になったが、ならばもう一発いくぞ!《鎌鼬》!」


 と言ってもう一度強力な打球。

 風を味方につけた風の刃が襲いかかる。この一撃は追いつかない。それぐらい速い、だったら話は簡単だ。

 のだ。


 私は追いつくことをやめる。

 何故なら


 「流石に追いつけないか、だが彼女『あいつ》なら……」

 「《瞬きの閃光シャイニング・エッジ》!」


 私はカウンターの一撃を放つ。

 身体の軸を中心に、円を描いて放った打球は死角を突くようにして打ち出したのだ。

 その打球を見て、オーディエンスはもちろん先輩すら教学と、困惑を混ぜ合わせた顔をする。

 しかし先輩はもう一度打ってこいと言わんばかりに繰り出す。しかしそれも打ち返し、サーブ権を獲得した私は続いて光の弾丸『流星シューティングサーブ》を叩き込み、同点に追いつき、それどころかアドバンテージを得た。


 もう、おわかりだろう。

 私の能力、それは星のエナジー。『光と星の輝きを操る』ものだ。だからこう言った芸当が出来る。つまりは、万能型だ。

 しかし先輩は「面白い」と笑いながらに第二のサーブ《蜉蝣かげろう》を放ち、瞬間的に軌道が見えなくなる。しかしそれを私は光の反射を利用し捉え、そしてついに……


 「これで最後だー《流星ドライブ》!」


 その一撃は人々の眼には映らない。

 剛速、いや相対性理論を無視したような光の弾丸が、まるで流星のように舞い降りドライブをかけてコートのフェンスに激突して止まる。

 フェンスに埋め込まれたその打球を見て僕は少しだけ楽しく思えた。

 そして彩は喜び、僕は勝利して歓喜をいただいた。


 そしてこれが僕のこの意味不明な異能力テニスの幕開けであったことは、今も忘れはしない。

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