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【デバ最】◆47.5話 イサマシのPCOレポート2◆

ゴールデンウィーク明けの日曜日、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は今日も今日とて創作活動に勤しむ中、日々の不安に押し潰されそうな自分を鼓舞して頑張っております。
と言うことで、デバ最の一幕をお送りします。

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「それじゃあイサマシ始めるぞ」
「心得ております。それでは」

 イサマシはフシギの構えるカメラを前に堂々と立っていた。
 その様子にフシギは不思議そうにした上で、ちょっとだけ煽った。

「……随分と慣れたな」
「そ、そうでござるか?」

 イサマシはおまけのように口調を変える。
 武士のような“ござる”スタイルを確立しようとするが、それが余計にフシギに煽り文句を与えた。

「その口調はキャラの立てすぎだが」
「うっ、良いのではござらぬか。こほんこほん、それでは始めさせていただきますぞ!」

 イサマシは強引に押し切った。
 フシギもこれ以上煽るのは止める。
 早速カメラをオンにし、動画を回し始めた。

「うむ、PCOレポートを観てくださっている皆々様。拙者はイサマシ。本日はモンスターズ・ペアを報告していこうと思う。……こんな感じで良いだろうか?」

 イサマシは少し自信がなかった。
 そのせいか、動画を撮り始めてから一度も喋っていないフシギに訊ねる。

 けれどフシギは一切口を開かない。
 無言を貫くと、首を縦にだけコクコクと振る。
 如何やら良さそうで安心すると、早速レポートを始めた。

「今は拙者がいる森には高得点のモンスターも数多く棲息している、言わば危険地帯。故に、装備を整え、何にも動じない用意をしておかねばならない危険地帯なのです」

 イサマシはリポーター風にレポートを始める。
 今歩いている深い森。
 時刻は夜。爛々と光る灯りを頼りに進んでいくと、ゴソゴソと草むらが揺れた。

「なにかいるようですよ。早速見てみましょうか」

 イサマシは本当に勇ましかった。
 ある程度の警戒はしつつも、揺れた草むらに近付いて行く。
 まるで警戒していない……ように見えてしまうが、実は一歩下がった状態を維持しており、その手には常に刀がある。

「さて、なにが出て来るでしょう……おおっ!?」

 イサマシが草むらに刀を突き立てると、中から何か飛び出す。
 現れたのは黒い大型の蛇。
 蛇系モンスター=ブラックシマジマスネークだ。

「これは大型の蛇が出てきてしまいましたよ。倒してもいい……分かりました。では拙者がこのマンスターの討伐法を軽くご紹介させていただきます」

 イサマシは現れたのブラックシマジマスネークを相手にする。
 このモンスター、名前は長いが能力は単純。単に大きな黒いシマヘビで、毒などは一切持たない。
 代わりにその図体を利用して相手を威嚇し、本来大人しいはずのシマヘビとは比較にならない程好戦的な性格をしていた。

 だからだろうか。
 相手にするよりも逃げた方が得策。
 そんなモンスターだからこそ、いざとなった時の対処法を伝授する。それがイサマシなりのレポートだった。

「まず、ブラックシマジマスネークは……」
「シャァッ!」

 イサマシがレポートを始めようとすると、先に仕掛けてきたのはブラックシマジマスネークだった。
 大きな体を利用して、バネみたいに伸ばす。
 すると勢いよく飛び出して、イサマシを噛み殺そうとする。

「このように先制攻撃を仕掛け、背中を見せた相手を狙うので注意が必要なのです」

 イサマシは冷静に攻撃を躱した。
 あまりにも最適解すぎる動きを見せると、ブラックシマジマスネークに搭載されたAIが暴走する。

 挙動不審な態度を取り、視線が右往左往する。
 隣に避けたイサマシのことを探すと、今度はイサマシの反撃だ。

「こうして鈍った動きを狙って、首を狙う!」

 ここも的確な動きを見せた。
 イサマシはレベルが存在していないにもかかわらず、なんてことのない動きを見せた。
 単なる技術。そう一括りにできるものではなく、首を狙って刀を振り下ろす。

「シシャア!?」
「顔を向けた瞬間は注意が必要なので、必ず防御の姿勢を取りながら攻め込んで、こう!」

 イサマシはブラックシマジマスネークと目が合う。
 けれどほんの少しだけ防御の構えを見せた。
 とは言えそれだけで、イサマシはすぐさま首を切り落とすべく、刀を動かすと、刀を振り下ろしたことさえ気が付かずに、ブラックシマジマスネークの頭が落ちていた。

「と、このようにするのが一番なのですが……」

 イサマシは自分でしたことを振り返った。
 かなり無理がある戦い方。
 スキルの一つも使わず、誰にでも真似できるようで真似できない神業で、イサマシは不安になる。

「これで良いのでしょうか?」
「良いと思うぞ」

 ここでようやくフシギが口を開く。
 不安に包まれるイサマシの気持ちを引き上げた。

「フシギ殿」
「イサマシはそれでいい。お前の技は絵になる」
「絵ですか? 拙者はなにもしていないのですが」
「お前はそれでいいんだ」

 イサマシは首を捻る。しかしフシギは押し通した。
 実は理由があるのだが、イサマシは知らない。
 けれど迷うのは辞めとばかりにバッサリ切り伏せると、イサマシはこの調子でレポートを続けていく。

「それでは次に行ってみるとするので、皆々様付いてきて下さりますぞ!」
「くどいな」
「うっ」

 イサマシはフシギに言われて嗚咽を漏らした。
 それでも苦言一つ言わずに、レポートをしてみせる。

 この真面目さ、勤勉さ、それに加えて絵になる技の数々。
 かなりの人気コンテンツで、動画や配信の伸びもいい。
 
 その事実を知っていたフシギはあえて本人には言わない。
 代わりに自由にさえておくと、その映像を撮り溜める。
 おかげでたくさんの広告料が手に入ると、フシギは心底安堵するのだった。

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