図書室
定食亭定吉
1
高校の図書室。利用者はいつも少ない。カウンターで、いつも暇そうに司書は読書している。とにかく昔から一人が好きで、読書が好きなモチコ。
その時、クラスメートのユウリが図書室に来た。目の合うモチコ。
ユウリは活発なスポーツマンで、男女共に人気あり、目立つ存在である。そんな彼女がここに来たのが謎だったモチコ。何か本を探しているユウリ。
声をかけようか悩んだモチコ。だが無視するのも申し訳なかった。
「あのー。スポーツの本はどの辺り?」
逆にユウリが聞いてきた。
「待ってね」
何か恥ずかしさを感じながら、分類検索表を見る。
「こっちね?」
七八○コーナーを案内したモチコ。
「ありがとう!あの数字は何?」
「あれは図書のジャンルを分類するもの」
「なるほどね」
ユウリは本を探す。
「本はここにある限り?」
目当ての本はないようだ。
「司書さんに言えば、出してくれるよ」
カウンターにいる司書に、目当ての本を出してもらうモチコ。
「これだったの?」
ユウリが探していたのはソフトボール関連の本だ。
「なるほど」
昼休みは残り十分ぐらいとなってしまった。
「ねえ、借りることは出来るの?」
「うん。こうやって、」
本の借り方をレクチャーするモチコ。
「ごめんね。私のために、本読む時間を削らせて」
「いいえ。そういえば、次、体育だから早く行こう!」
午後一番の授業は体育。ソフトボール。運動音痴なモチコ。
「ねえ、二人組になろう」
ユウリはモチコに声をかける。それは予想外だったモチコ。いつも壁打ちを一人でやっていた。
「えっ?いいの?私、下手くそだから迷惑かけてしまうし」
「いいよ!単なる体育だし、楽しくやろう!」
「うん」
キャッチボールをする二人。
「間隔を狭くしてやろう!」
二人の距離間隔を縮める。
「大丈夫!球を怖がらなければ!」
球を怖がるあまり、キャッチ出来ないモチコ。
「ゴメン」
「ドンマイ!じゃあ!本当に近い距離から投げるから、それなら怖くないでしょう?」
「うん」
更に至近距離になって、モチコに投げるアスカ。
(キンコンカンコン)
授業はあっという間に終了。
「ごめん。何か私のために」
モチコは詫びる。
「いいのよ!お互い様よ!」
不思議な友情が芽生える。
「しかし、教え方うまいね!」
「いや、さっき借りた本に書いてあって、キャッチボール苦手な人の克服方なの」
「ありがとう!私のために」
「ごめんね。お節介だよね?運動、苦手な人からしたら、ソフトボールなんて、やりたくないものね」
「それはお互い様でしょう?」
「私は嫌いでないよ。本。何かを教えてくれるし」
「そうね」
全く接点のない二人が本をきっかけに仲良くなった。
図書室 定食亭定吉 @TeisyokuteiSadakichi
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