人の生きる意味とは何か?

 思春期にさしかかると、誰もが抱く疑問である。
 蒼臭く、時と共に、記憶の奥底にしまわれ、普段は思い出す事もない。
 しかし、大人へと踏み出す時に、抱く大切な疑問。

 この作品は、この疑問の答えを示す。

 出会いを偶然と言うなら、人生は白黒の乾燥した世界に過ぎないだろう。
 しかし、出会いを必然だと考えるなら、人生は、色彩豊かな素晴らしい経験の時となる。

 運命の女神が用意する糸は、ひとつではない。
 人生は、用意された糸をひとつひとつ大切に選び取って、ていねいに辿っていく。

 物語では、異国に育ち、今はこの国の港町に住む女性。
 たった今まで、関係が無いと思っていたその女性の糸が、自分の糸が結ばれている事を主人公は、発見する。
 
 結び目が、導く出会い。それを人は縁と呼ぶのだろう。

 縁ある出会は、時に喜びに溢れ、時に悲しみに支配される。
 しかし、人生が豊かに色づいていく事に違いは無い。

 人の生きる意味は、存在しない。

 自身の人生は、自分で意味を持たせるのだ。そのために、糸の結び目を見つけ、辿り、人生に色づけし、豊かなものにしていく。

 僕たちは、出会うために生まれてきた。  
 そして、出会いこそに、意味があるのだ。
 それは、素晴らしい瞬間なのだ。

 物語は、ここに蒼臭い、しかし大切な疑問の答えを示した。
 
 そして…。
 たった今、僕は理解出来た。
 この物語は、純粋なのだ。 
 だから、感動の涙を誘うのだ。

 この物語は、読むべきだと思う。

 
 
 

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