第3話 哀れな非道な男の過去(その2)
初めに横たわっていた少年を発見したのは、当時村長となった、ノーレッジであった。村長の名前は、代々その村長の特徴を表している。博識であったノーレッジは少年を発見した時、真っ先に違和感を覚えた。街からの子にしては、随分と成長している。ならば動物に育てられたのか。否、育てられたにしては、人間味がまったく落ちていない。警戒心の強い野生の動物に育てられた人間は、皆警戒心が高くなる。このように人目につく広場で横たわっていることなんて、まずありえない。博識な彼だからこそ、この少年が異常であることを見抜けた。村長は少年の傍に、最低限の飲食料を置き、その場を去った。
異常な事柄に対して容易に手を出すことは躊躇われる。ノーレッジは様子を見ることを選択した。
翌日も、ノーレッジは少年の元へ向かい、飲食料を置いた。昨日置いておいた食料は完食している。彼は思い切って、少年に何者なのかを尋ねてみた。しかし、虚ろな目を向けてくるだけで、言語を理解しているのかさえ、わからない。気味が悪くなった彼は、即座に家に帰った。
さらに翌日、昨日と同じことを問うと、少年は返事をした。
「土の中からやってきた。」
返事はされたが、訳が分からない。なぜ土の中にいたのかと問うと、
「埋められた。アイツに。」
と、先日赤子を埋葬した男を指さしたのである。
ノーレッジは考察する。この少年は先日の赤子なのだろうか。では何故こんなにも成長しているのか。訳が分からない…
〜少年視点〜
何が起こっているのか、自分でも分からない。少なくとも目の前のこの男は敵では無さそうだ。自分の記憶を辿るとこうだ。自分を誕生させた存在は気味の悪い者にそそのかされ自分を捨てた。そこから意識が途絶え、気がつくと男に土に埋められそうになっていた。暴れようとするも、身体が言うことを聞かない。仕方なしに土に埋まっていた。突如身体が急に伸び、地上に頭が出た。強い飢餓に襲われていたが、ひたすら光の方向に向かい、力尽きた。
辺りが明るくなると共に、目が覚めた。周囲には沢山の生物がいる。しばらく空腹に耐えなながら呆然としていると、周りの生物よりも少し小さいが、似通った特徴をもつ者が現れた。自分の事を手の先端にある細長い物でつついてきた。反撃をしようと思ったが、まだ自分の肉体についてあまりよく知らない事を思い出した彼は、反撃を考えるのをやめ、自らの体を観察し始めた。基本的には、周りにいる生物と変わらない。二本の棒状の突起が4本、体から生えており、先端はそれぞれ4本に枝分かれしている。股にも突起があり、そこからはたまに水分が出てくる。その背面は割れており、内側には穴が開いているらしく、時々固形物が出てくる。
異端 Chiroro1023 @Chiroro1023
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