エピローグ
ここまで読んでくれてありがとう。
これは、進級試験に行き詰まった学生が、バカなアイデアを閃いて、それを本当に実行してしまう話だ。
こたつ、というこの世界に存在しない暖房器具を作るのに用いた素材は
・既に廃れてしまった、熱源ルルシア
・大量発生した魔物の利用方法として開発段階のヤヴルロブロの布
・世にも珍しい聖なる木タプケルスの端材を使った合板
・プロクスティオ=ウィラードの鱗を用いた断熱材
・ありふれた鉄
・ありふれていないロシュティオの抜け殻の遮魔材
これらを手に入れる為に用いた時間はおよそ一年半(移動距離と費用には目を瞑りたい)。
この試みの中で得られたものは一言では表せない。
珍しい素材を手に入れる為の苦労や、それぞれの素材にまつわるエピソードやバックグラウンド、いくつもの奇蹟、未だに未知がこの世界に溢れている事。
無数の気付きがあった。
だけど、その中で一番感じたのは、僕たちの周りに当たり前に存在する様々な物質の有り難さだった。
木材や断熱材、絶魔体を手に入れようとする時、僕は毎回、個人での入手の困難さの壁にぶつかった。
ありふれた鉄でさえ、個人で手に入れるのは不可能に思えるような鉱山の奥地へと足を進めて、一般人には使えない高度な魔法を用いなければならない。
僕たちはどうしたって、一人では生きていけないんだ。
僕はこの一年半、頼れる幼馴染みをはじめとして、とても多くの人の力を借りた。
僕たちの周りに溢れている様々な物質は、そのどれもが原料の状態から製品として僕たちの目の前に現れるまでに、様々な人の手と力を経由している。
それぞれが、異なる転生元世界から転生してきた僕たちが、この世界で、そうやって協力して生きている事が、とてつもない奇蹟に思えたんだ。
この奇蹟に、そして、こたつ作りに関わってくれた全ての人々に、この場で改めて心よりの感謝を。
転生世界で、こたつを作ってみた。 落葉沙夢 @emuya-s
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転生世界で、こたつを作ってみた。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます