複雑で痛烈なほどにリアルな人間模様を回顧的に描き出す事で、主人公の境遇への理解と共に、読者もまた自らの原点に立ち返らせられる。純粋さからくるさっぱりとした文体と、悲痛とも言うべき現実とが、思春期を巧みに表現している。特徴的な副題の数々、特にラスト第七回のものは、未読時から良い響きであると感じたが、様々な背景と思いとを知った時には、更に別な強い魅力が働きかける。
作者が連載中の長編、『新章たるウメチカ!』の主人公・千佳が、彼女にとってとても大切な「太郎君」との思い出を綴ります。とてもつらく悲しい過去に現れた、力強くて優しい一筋の光。その光は、千佳が前を向いて進んでいくための大きな力となります。希望に満ちた、温かな気持ちになれる短編です。素直で可愛らしい千佳の物語。ぜひ一度触れてみてください。
本作は作者が連載中の「新章たるウメチカ!」の前日譚にあたる話であり、ショッキングな内容も含まれています。また、短編の作品であり、eスポーツ自体もそれほど出ては来ないのですが、eスポーツの素晴らしさ、決して他のスポーツに劣るものではない、という強い想いを感じました。