近代国家を、つくろう。

 近代国家という生き物がなぜ今世界を席巻しているのか。という事を描いている小説。と言えば簡単な話ですが、じゃあその「近代国家」とは何のもとに築かれるものでしょうか。
法?科学?国民?鉄と血?それとも別の何か?あるいは……全部?という問いを投げかけられて、じゃあそれを物語の上ででも描くのってどうやるの?広範な知識が必要では?
……となって、結局それを紙の上とはいえ描き切れる人物というものは限られてきます。

その稀有な実例。という言い方でも褒め方としては過少ではないでしょう。そう思います。

 じゃあ主人公はというと俗にいえば軍人の転生者。となりますが、記憶を取り戻したのは運悪く、いや、運よくなのか、全てを失った後。いえ、たった一人、ロイスという少女だけは一緒にいましたか。

 世界は、というと人間には厳しい世界でした。劣等種と呼ばれて生殺与奪は魔法を操るエルフや生ける騎馬兵としてのケンタウロスの思いのまま。気分次第で殺されて奪われる。全てを失ったのも誰が、なぜやったのかは分かりませんが、たまたま運悪く引き潰されました。鋤を引ける家畜が居るだけマシな階層だったのかもしれませんが、まあ残念ながらどうにもなりません。

 麦なら踏みつけられてまたのびるかもしれませんが、普通人間は踏みつけられればどうにもなりません。心か体が壊れます。
ただ、彼は国を作り、冒頭を読めばわかる通り戦場から浪漫を消し去りました。
その一代記と言えるでしょう。どこまで描くかは知りませんが、とても楽しみで、この文章を読んだ人にもぜひ楽しみに読んでもらいたい。

本当に、本当にそう思います。