二つの葛藤

「それで、どこに行くの?」

「今日は、遊園地に行こう。」


真司は、内心悩んでいた。


家族の命の危険がある中、娯楽施設に行くのは、真司の中では気が引けていた。


しかし、いつ陽一を殺すと決めるかは、真司本人も分からなかった。


だから、真司の中で、人を殺しやすい場所に行くと、手紙が届いたその日に決めていたのだ。今後どこに行くのかも、予め決めている。


よって、家族の事は頭から離れないけど、陽一に何かを感ずかれると困るから、精一杯この一週間を楽しもうと決めた。


 真司が、陽一を殺すか悩んでいるように、陽一も、ある事で悩んでいた。


 それは遊園地に行くということ。陽一は、ジェットコースターが大の苦手。ジェットコースターが山ほどある遊園地には、学校の遠足でしか行ったことがない。勿論、その時もジェットコースターには乗らなかった。


「まじで言ってる?」

勿論、陽一は嫌がった。

「うん!場所は、マシマパークでどう?」

陽一は、さらに難色を示した。

 なぜなら、マシマパークは、日本でも有数のジェットコースターだらけの遊園地である。そこに行くのは、ジェットコースターに耐性のある人が殆どだ。陽一にとってこれ程嫌いな場所はない。 


「一応聞くけど、俺、ジェットコースター乗らないよ。」


「え、何言ってるん?乗せるに決まってるやん!」


真司は、陽一がジェットコースターが苦手な事は、誰よりも知っている。


陽一は、さらに嫌がった。

そこで、真司は説得を始めた。


「これからさ、どんな人に出会うか分かんないじゃん。運命を感じる女性に会ってもさ、その人がジェットコースター好きだったらどうする?一緒に楽しめないよ。それどころか馬鹿にされるかもしれないんだよ。」


「俺はその人とは付き合わないからいいんだよ。」


「そういえばさ、バンジージャンプしてみたいって言ってたよね。」


「そうだけど。」


「あれをするにはジェットコースターに乗れないと到底出来ないと思うけどね。」


「バンジージャンプと、ジェットコースターは別物。」


「そんな事ないと思うよ。どっちも絶叫系じゃん。もうさ、乗っちゃおうよ!こんな時じゃないともう一生乗れないよ。」


「でも……」


「いいから。ね、乗ろう!」


「真司がそれだけ言うなら乗ってやるよ。」


「ほんと!」


「うん!そして必ず克服してやる!」


「そうと決まれば、早速出発だー!」

 陽一はジェットコースターを克服出来るのか、そして、真司は陽一を殺すのか。

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