ジェットコースター其ノ弐

「それにしても長い行列だね。」


 あの後、何度か逃げようとした陽一を諭した真司が、陽一に話しかけた。


「ホントだよ。何でこんなに恐ろしいものにこれだけの人が魅了されるのか。世も末か。」


「そりゃ、怖いもの見たさ的な感じじゃない?まぁ、絶叫系が好きな人もいるけどね。」


「ふーん、俺にはまだわかんないね。」


「今日分かるよ。」


「ならいいけど。」


 そんな話をしていると、いよいよ二人の順番が来た。二人は、隣り合わせに座り、首にかけるレバーを下げた。


そして係員さんが、


「それでは、行ってらっしゃーい!」


言った。


その瞬間、ジェットコースターがゆっくりと動き始めた。


「ねぇ、叫ぶんだよね。」


「そうだよ。」


 頂点に来て、真司が

「来るよ!」


と言った。


その瞬間、ジェットコースターは急降下した。体の中の内臓が、宙に浮いているような感覚に襲われる。


「あぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!」


 二人は叫び続けた。真司は楽しんで叫んでいるようだったが、陽一は、心の底から叫んでいた。


〜スタートしてから約三分後〜


 スピードが落ちてきて、元のスタート位置が見えてきた。徐々に、二人の叫び声も小さくなっていく。


 遂に、ジェットコースターはゴールに着いた。二人は、ジェットコースターから降りて、階段を降り、近くのベンチに座った。


「いやー、怖かったよ。よくあんなものを作ろうと思ったよね。」


「開発者への愚痴はいいからさ、どうだった?克服できたの?」


「そうだね。今まで食わず嫌いみたいな感じだったわ。大人になって、改めて乗ってみると案外楽しいもんだね。」


「やっぱりね。」


「なんかさ、めっちゃ乗りたくなってきたから次のやつに乗りに行こう!」


「分かった、分かった。」


 人が変わったように、ジェットコースターに乗りたがる陽一に連れられ、真司も次のジェットコースターへと足を進めた。

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起きるべくして起きた不幸 野田 健斗 @hibanamoriton

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