Epilogue 〜Ceremony〜

 姉さんは自らの体内に王の肉体を取り入れることで、目的を果たした。少なくとも、その半分は。


 姉さんとお嬢様はそれぞれに自らの破滅を悟り、互いに何かを与えようとしたのだろう。お嬢様は絵画世界という偽りの安息の世界を、姉さんはお嬢様に願いの成就を。


 僕は二人の抜け殻となった身体を壁から外した絵画の上に横たえる。


 二人の血を吸った絵画は一瞬まばゆく光を放った。そしてその光が収束すると二人の肉体は絵画世界へと吸い込まれていった。


 僕は誰もいなくなった城の一室で静かに佇む。

 

 この物語は誰に捧げられるべきだろうか。


 僕たちの生きる世界は薄氷を踏むが如くに脆く、酷薄だ。


 この物語は取るに足らない物語。

 

 それは口伝で伝え語るには余りにも穢れすぎ、そして悪戯に時がひとりでに紡がれるに任せすぎた。


 最も低きにあり、最も穢れたもの。不死という病に侵された奴隷騎士フィデルタ。


 そして、王の血族であり最後の神族イーチェ。


 これは、僕だけが知る唯一の物語。

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Her Remedy 藤原埼玉 @saitamafujiwara

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