男娼で薬物中毒で鉄砲玉の男と、その彼を取り巻くヤバげな男たちの、アンモラルでインモラルなドロドロの愛憎劇。
ボーイズラブです。裏社会や下層社会を舞台にした、現代もののお話。魅力はやはり主人公の藤生さん、というか、語弊を厭わず言うなら彼のダメ人間っぷりがたまりません。
まさしく地下社会まで「落ちた」という、そんな形容のふさわしい男。すぐ薬に溺れるばかりか、常にどこか捨て鉢で、自分の人生の責任ひとつ引き受けることができない性格。なのに「命令されて・脅されて」というエクスキューズさえあれば、他者の命を手にかけることすらできてしまう。
世にクズの類は数多あれど、彼の場合はなんだか身近な感じがするというか、ただ流されるままに生きてきたかのような、この弱さや卑怯さのようなものが本当に好みでした。
反面、身を売って生計を立てることができるなど、実は結構な美形なのでは? と思わせるところもあって、つまり「顔だけの男」みたいな気がするところも好きです。妙に生々しいダメさ加減。ことあるごとに体の関係を求められることも含めて、なんだか妙な引力を持った主人公でした。