第27話 黄金の林檎 前編

 今日も今日とて降りしきる雨。ブラウン管テレビの砂嵐にも似た音は、不思議と心を落ち着かせる。

 なによりも水分と緑の香りをたっぷりと含んだこの時期特有の空気が時田は好きだった。

 そんな時田率いるメンバー達はキッチン義影で昼食を取っていた。

「なあ、黄金の林檎ってあるじゃんか」

「ああ。食べたら不老不死になるっていう林檎だな」と鷲津が首肯する。しかし口の周りを赤くして大好物のトマトスパゲティを啜りながらほがほが言ったので、時田は不快そうに眉をひそめた。

「お前が黄金の林檎を食べたら、全世界のグルメ料理を巡りそうだな」

「ああ。ぜひそうさせてもらう」

 鷲津は食通である。食べるも良し、作るも良しの男だ。

 しかし彼の魅力はその料理好きな一面にとどまらない。実は鷲津には多くの趣味がある。寡黙で無愛想なため、なかなかその片鱗を見せることはないが、所有しているスキルの数は聞けば驚くべきほどに多い。長年一緒にいる時田ですら、未だに把握していないスキルを鷲津はまだまだ隠し持っていた。

「で、黄金の林檎がどうしたのよ」

 と、巻原が皮付きのリンゴをしゃくりと一切れかじる。

「んー、うまい。黄金の林檎ってどんな味がするのかな」そして単純な感想を述べながら、うっとりと咀嚼した。

「あ、真希さんが今言ったことを話したかったっす」

 湯気のたつ緑茶をズズズと啜り、ことんとテーブルに置いた金星が手を挙げる。

「な、なんかめっちゃ甘いイメージがあります! 砂糖直接食べてるみたいな!」

「そう? なんか苦そうだけど。金だし」

 ここで鷲津が切り込む。

「金は無味無臭だ」

「え、そうなの?」

「え、そうなんですか?」

 と、女性陣二人が声を揃えて驚いたところで、時田が水平にした手を顔の前に挙げる。時田にとって、ここまでは想定内の会話だった。

「オレが言いたいのはですね皆さん。まずはどうして林檎が金色になっているのかってところから話をしたいんですよ」

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ファンプレ! 〜ファンタジー・ロールプレイング〜 上坂 涼 @ryo_kamisaka

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