最終話 その後の世界(ダイジェスト)

 日本が毛利氏によって平定されて数日。俺の意識は真っ白な世界に飛んだ。なぜそう言えるのか?どう視線を動かしても手足を動かしても俺の身体が見えないのだ。漫画で言うなら幽霊になって空を漂ってる。そんな感じ。というかこれは以前にも体験したぞ・・・


「人の世界の50年。下天という世界と比べたら夢や幻と同じ。生を受けた者はいつかは滅びるものであーる。久しぶりじゃの若いの」


 俺の前に現れたのはギリシア神話に出てくる全能の神ゼウス・・・によく似た老人。というかビックリ男チョコのSゼウスといったほうがいいな。額には星印があって、胸の鎧には神という字のマークが描いてある。


「あぁ神様・・・ご無沙汰しております」


 思わず頭を下げる。


「お主の描いた大河ドラマ。楽しませてもろたぞ」


「楽しんで頂けて幸いです」


 カラカラと笑う神様に俺は頭を下げる。


「一大決戦はなかったのは残念じゃったが・・・」


「ははっ。小田を武田領に飛ばしたのはそれが理由ですか?」


 そういうと、神様は肯定するように頭を縦にふる。


「多分、武田か長尾か北条の直系辺りに転生させていたら可能性はあったんじゃないかと・・・」


 近くに武田、北条、今川の巨大勢力がある中での小さな国人の次男坊として出発とか難易度高すぎである。まだ俺のようなフリーの傭兵の方が成り上がれる可能性があるよ!


「とりあえずこの世界はお前のものじゃ。好きにせい」


 そういうと神様は姿を消し、俺は元の世界に戻ってきた。

 この世界は俺のもの?最初は判らなかったが、齢50を超えてもほぼほぼ変わらない自身の身体を見て悟る。超常現象の言い訳に自らそう名乗り、巷でも人々から言われている仙人、所謂不老の身体になっているということを・・・まぁ先輩仙人である司箭院興仙さんも100歳超えた1570年までも若々しい姿が目撃されているというのだから疑われることはないだろうけど、家族には伝えておこうと思う。


 さて、この後の日本について語ろう。家督を嫡男の畝方元晴に譲り、全ての職を辞した俺は台湾に渡った。台湾では、施政官になっていた元就さまの孫の毛利輝元くんの元で新たに海軍を編成して南下しながら西洋列強を東南アジアから叩き出し、日本を中心とした大東亜帝国を建国する。

 なお、中国と朝鮮半島に手を出すと泥沼確定なので一切無視したよ。

 その後、オーストラリアに上陸して開拓を開始。


 オーストラリアには石油に石炭。鉄、金、銀、銅、アルミニウムがかなりの量眠っているからね。

 開拓する人が少ないのを補うために色々な蒸気機関が稼働しているので、直ぐに近代(明治)ぐらいには発展したのはご愛嬌である。

 オーストラリアで採掘された資源でさらに艦隊の数を増やし、東南アジアの植民地を取り返しに来たオランダ、ポルトガルそしてスペインの艦隊を撃滅し、欧州の富や名声。そして発展をかなり妨害したけど、まあ、彼らによって搾取され奪われた命や絶滅させられたら種の幾つかを救ったのだと思って無視する。

 ついでにスペインの艦隊を撃滅したら、史実通り海洋進出してきたイギリスから使者が来たので通商条約を結んでおいた。

 1900年代初頭、台湾を巡っての日清戦争が勃発した。何故攻めてきた!って感じで清の軍隊はその悉くが海峡の藻屑となって消えたよ。

 次にシベリアを経由して清に進出してきたロシアとの間に勃発した日露戦争。樺太に上陸してきたのだが、海軍戦力差は歴然である。ロシア軍の大半は間宮海峡で沈み、支援のため回航してきたロシアのバルチック艦隊もタイ沖で殲滅した。ロシアは方針を変え大陸沿いに南下して朝鮮半島を占領。李氏朝鮮が滅亡。多くの朝鮮人がシベリア送りされたそうだ。

 続いて欧州で起こるロシア・イギリス・フランスとドイツ・オーストリアによる世界大戦。

 日本もイギリスと懇意にしていたので地中海に艦隊を派遣した。史実だとアジアにもドイツの植民地があったけれど、こちらでは既に日本の統治下にあるので派遣するしかない。

 折角なので飛行機による魚雷と爆撃でドイツ海軍の艦船をそれなりに沈めたよ。

 大戦はロシア・イギリス・フランスの連合国が勝利したけど、ロシアでは革命が勃発。ソビエト連邦が樹立し、ロシア皇帝が朝鮮半島にまで逃げて来て東ロシア帝国を建国。もといた朝鮮人は流浪の民となって大陸に散った。え?日本は来なかったのかって?全部東ロシア帝国へお引き取り頂いたよ。「ウリに愛は無いのか!」って叫んでいたけど、同じアジア人であっても国交はない国と、戦争はしたけど講和条約締結等で付き合いがある東ロシアとではね。まあ、俺が裏で無視するように介入したんだけどね。そこに慈悲などない!

 その後、清で革命が起きて清は崩壊し中華民国が樹立。中国は革命軍を支援したアメリカとイギリスの草刈り場になったのだけど、そこにソビエト連邦が介入してきた。

 そしてその隙をついてドイツが欧州でソビエト連邦に宣戦を布告。

 第二次大戦が勃発した。日本はイギリス・アメリカへの燃料、食料、弾薬の供給や艦船の修理地として大活躍。

 中国は三国志のように北の中華人民共和国、東の中華民国、西の中華連合に三分割されて統治されることになった。

 一方の欧州は、ナチズムと共産主義は絶許であると布教したお陰か、初夏に戦闘を始め晩秋に停戦。冬の間に戦力を整えて、また初夏に戦闘を再開するといった感じで20年近く戦ってドイツの総統が病死したことで停戦に至った。

 因みにファシズム・ナチズムは社会主義の亜種である。ヒトラー総統は血による後継を指名せず選挙によって後継を決めよと言って亡くなったためドイツの後継者を決める選挙ではソビエト連邦・イギリス・アメリカの介入を受けて西と東に分裂した。

 そこから30年ほど東西冷戦が続いたけど、共産主義国は史実通り経済が崩壊。ソビエト連邦は西ロシア共和国を中心とした20もの国に分裂し、東ドイツは再び西ドイツと統合された。

 さて、その間の日本というと、日本からオーストラリア一帯を巨大な経済圏とした連合国家として存続していた。

 植民地政策だと独立運動が起きたら即詰みなのは判っていたから、絶妙な匙加減を駆使して21世紀に入っても広大な領土を保有している。まあ、台湾とオーストラリアは日本からの入植者が大半だから独立運動は起きようが無かったし、東南アジアはオーストラリアからの資源が多数援助がされているから、日本から独立するメリットが無いというのが理由なんだけどね。

 さて、そろそろ元の俺が生きていた時代がくる。これからの時代には未知が待っている。実に楽しみである。


 END

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元就の野望~全国版~。わたしはガチャを駆使して補佐します 那田野狐 @nadanofox

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