第277話 毛利による全国統一なる
- 1543年(天文12年)1月 -
- 近江(滋賀)観音寺城 -
「武田は毛利に従属いたします」
年始の挨拶として観音寺城に来ていた武田信虎さんが、元就さまとの謁見の場で深々と頭を下げた。
「うむ。よく決断された。これからも宜しく頼む」
元就さまが大きく頷く。周りがざわついていないのは、事前に話しあいが済んでいるからだ。
武田信虎さんが毛利氏に下った理由は、不戦条約が無効になったとき毛利に勝てるビジョンが見いだせなかったのが理由だ。
まあ、小銃を見て自走砲を見て止めに鋼鉄製の軍艦とその大砲の破壊力を見れば、まあそうなるよね。
東北の国人衆の中には反発する勢力がいるだろうから、従属の挨拶が終わったら武田信虎さんたちはお話し合いをすべく東北に出向くという。多分物理的に拳で語らうとかそんな感じに・・・
無論、武蔵から尾張まで船で来たように尾張から陸奥(福島、宮城、岩手、青森、秋田北東部)
までは戦艦「安芸」に乗って行くのだ。東北の人たちからすればまさに黒船来航だろう。
「凄いな・・・」
謁見を終えた武田信虎さんは、発展著しい観音寺城の城下を見て呟く。
「ここ観音寺城は地理的に国のほぼ真ん中にあり、いざという時は舟を使えば淡海を通って西は瀬戸の内海、北の
「ほぅ・・・」
俺の言葉に武田信虎さんは感心したように頷く。
実際、日本海と大平洋と瀬戸内海を大量輸送が出来る舟で結べるのは大きいし、いざという時に逃げるのにも便利だ。
- 摂津(大阪北中部と兵庫南東部) 堺の港 -
元就さまとの年始の挨拶を終えた武田信虎さんー行はそのまま舟に乗って
観光最終日、俺たちは堺の港に来ていた。
「ありがとうございました」
武田晴信くんがぺこりと頭を下げる。これから数年、彼と何人かの武田氏家臣とこの地にある学舎で毛利の統治方法を含む色々な事を学ぶのだ。
「大膳大夫殿も勉学に励まれよ。何、すぐに物にできますよ」
ニッコリ笑って励ます。実際、史実でも軍事に内政にカを発揮した人物だから多分大丈夫。
「では行きましょうか」
武田信虎さん一行と共に戦艦「安芸」に乗り込む。
尾張で安芸への乗船を希望した織田信秀さんと斎藤利政さん松永久秀さん、今川元親くんを乗せ、小山田虎親が現在開発を指揮する陸奥宮城を目指す。なお宮城は、昔は奥州探題や国府があり、後に宮城県の名の由来にもなった陸奥の要地だ。
「帰りも迎えに来ましょうか?」
「そうだな。馬で帰るより早そうだ。頼ろうか」
ふむふむと顎髭を触りながら武田信虎さんは頷く。
「了解しました。伝令に御伽噺衆を置いていきますので活用してください」
俺は御伽噺衆の鳥使いに伝令としてついて行くように命令する。
ちなみに御伽噺衆の鳥使いというのはガチャ産の帰巣本能の反則という能力?を持っているノスリという小型の猛禽類を使役する人間のことで、今では15組ほどいる。
なお、帰巣本能の反則というのは、巣に帰るだけでなく、俺や使役者の元にも戻ってくるのだ。
鳥を使った高速通信網には何度となく助けられたことか・・・
武田信虎さんたちは小舟に乗り換えて港に向かう。と同時に港からも小舟がやってくる。
「我こそは、伊達左京大夫が嫡男。伊達次郎晴宗と申す」
「同じく弟の大崎小僧丸義宣と申しますです」
小舟の方から名乗りを上げる青年がいる。どうやら元就さまとの謁見を望んでいるらしく船に乗りたいらしい。
小山田虎親からの紹介状も持参していたので乗船を許可する。
武田氏が毛利氏に従属したことをどう思うか?と尋ねたところ、武田氏に従属したばかりの自分たちが武田氏の判断に口を出せる立場にはないと実にサバサバしていた。
そして文句が出るとしたら伊達氏より北の勢力だろうとも・・・
武田信虎さんを宮城に送り届けてから二週間後、俺のもとに武田信虎さんから、陸奥の武田氏配下の国人衆を説得したので迎えに来て欲しいという連絡があった。
1543年2月。ここに、毛利氏による全国統一が為されたのだった。
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