第4話 これから

 東京に戻ってしばらくすると、コロナ騒動も一息ついた。健二は由美子の実家に電話した。


「ごめんね、健二君。由美子は今年は帰れなかったんだよ。携帯の番号を言うから、電話してあげてね。きっと喜ぶわよ」


 健二は、何がなんだか分からなくなった。ともかく由美子の携帯に電話した。


「あ、由美子。俺、健二。タイムカプセルの中身は、大抵はみんなに郵送できたよ。で、由美子はあれからどうしたの?」


「え?え?、もしかして、富江中学校の健二君。すごい久し振りじゃない。懐かしい!タイムカプセル?ごめん、今年だっけ?私は帰れなくて」


「こないだ只狩山で会ったばかりだよね?」


「健二君。もしかして、タイムカプセルを掘り出して、私の中身を見たの?」


「好きな人と一緒にいたいというやつか?こないだ聞いたよ」


「それとね、おしろい花の種を2つ入れといたよ」


「それはお前からもらって、俺が持ってるよ。おしろい花の不思議な話もお前から聞いたよ。ともかく、色々とよく分からないことがあるから、会って話せないか?」


「OK。私今横浜だけど、健二君は?」


「渋谷だよ。じゃ、今度の土曜日に遊びに行っていい?」


「勿論いいけど、一つだけ言っておく。私は、結構バリバリやってるよ。あなたが知ってる中学生の頃のおとなしい私は、今はもう世界のどこにもいない。あなた、富江町で昔の私に会ったみたいな事を言ってるけれどね」 


 健二の手の平には、黒くコロコロした種が2つ乗っかっていた。あの日、富江町で確かに由美子からもらったはずの、おしろい花の種が。


                                    了

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タイムカプセルの歌 海辺野夏雲 @umibeno

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