あとがき
あとがき
僕は、日常が散ってしまう物語が大好きです。
僕が10歳のときに、「JIN-仁-」というドラマが放映されました。子供のときから日本史をはじめとする社会科が大好きだった僕は、幕末にタイムスリップするという内容のそのドラマを面白いと感じました。ですが、その感想は2期の最終回を見て大きくガラリと変わります。
……なんで、こんな切ない気持ちになるんだろう。悲しいとかではなく。切ない。
と、当時10歳の僕は子供ながらに思いました。主題歌の平井堅さん「いとしき日々よ」が妙に突き刺さったことは今でも覚えています。
その感情の名前を知ったのは、晴れて僕がアニメオタクになった高校1年生の春のことでした。「一週間フレンズ。」を起点に始まったオタクライフは、毎日毎日深夜に過去のアニメを漁って見まくってという日々で、ときには徹夜をして1クール12話を一気見するという暴挙を成し遂げたり。今思えばすげえな……。
……その、一気見をしたアニメに、答えがありました。
「あの夏で待ってる」「true tears」「一週間フレンズ。」「色づく世界の明日から」……etc
「一週間フレンズ。」は別として、その他のみっつにはラストに共通する要素があります。(ネタバレ注意)
なんらかの形で、主人公とその周りにいる人の日常が大きく変化する。……言ってしまえば、終わりを告げます。
この終わりを見て、「もっとこのキャラたちの続きを見たい、日常を見たい」という気持ちを、「JIN-仁-」にも感じました。
この感情に、「喪失感」という名前がついていることを知った僕は、気づいてからはそれを味わえるアニメ、小説、漫画を第一に求めて今まで生きてきました。もちろん、甘々なラブコメも好きです。のんびりふわふわとした日常系も好きです。百合も多少は嗜みますし、二次元のアイドルだって大好きです。
しかし「終わる日常」に美しさを感じてしまった僕は、とりつかれたように淡い物語が大好きになってしまいました。それが作風に反映されてます。
どうも、自分語りが長くなってしまいました、白石です。無事、通算11本目の長編も終わりを告げてホッとしているところです。
今作で描きたかったことは、上に書いた通りです。ハッピーエンドも好きです。登場人物は幸せになったほうがいいに決まっています。僕はサディストではありません。
でも、楽しいことだけが人生ではないです(……ブーメランだなあ)。キャラの萌えを打ち出すことがあまり得意ではない僕が、キャラを魅力的にするために取れる残された方法は、とにかくキャラを苦しめることでした。それも、徹底的に。そうすることで、より生きた人間に、映ってくれるのではないかと思って。
それが正解かどうかは、今もわかっていません。結果は出ていないので、もしかしたら間違っているのかもしれません。
だとしても……特に、自分の使命と淡い恋心に挟まれ苦しむ真白に、少しでも感情移入していただけたならば、僕は幸いです。……ごめんね、真白。ハッピーエンドにしてあげられなくて。
今回、舞台は冬の札幌ということで、もう四年前になりますが、十八年過ごした地元の冬を思い出しながら描いてみました。登場人物の名字(北郷・米里・川下・本通)は全て地元札幌市白石区の地名からお借りしました。ま、僕の住んでいた街の名前ではないんですけどね()。
それでは、このへんで。
ここまでお読みいただいて、ありがとうございました。
2020年6月4日 白石 幸知
天使の君と、ひとりの僕。~恩返し同居生活、始めました~ 白石 幸知 @shiroishi_tomo
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