我々は誰を殺すべきか(あとがき)
新型コロナについての情報がある程度明らかになってきたとき、私は「これはトロッコ問題だ」と思った。
トロッコ問題とは何か、ということは詳しくは説明しないが、要するにある属性Aの集団と、別の属性Bの集団があり、双方ともを救えない場合、どちらを救うことを選択すべきか、という思考実験。
新型コロナにたいしてハイリスクなのは、高齢者、喫煙者、肥満、既往症持ちということが明らかになっている。若い現役世代はリスクゼロではないものの、重症化の確率は比較的低い。
感染を防ぐために、店を閉めて自粛を徹底すれば、重症化のピークを後ズレさせることが可能で、救える命が増えることが期待できる。(総感染者数は減らすことはできない。あくまでもピークを後ズレさせることのみ。)
一方で、自粛を徹底すればするほど、経済的に困窮する人が増えるのは避け得ない。
平成大不況の最中、自殺者は今より1万人近く多かったが、経済を意図的に止めている今は、GDPはマイナス20%を超える減少が予想され、もっとたくさんの人が生活苦で自ら命を絶つことが予想される。
(余談だが、平成大不況中に筆者の知人にも自殺した人が複数人いる。)
つまり、あえて乱暴なことを言えば、我々が今求められている「自粛」とは、喫煙者肥満老人の命を守るために、現役世代100万人以上失業させ、数万人の生命を犠牲にするという所業なのだ。
はたしてそれは、我々が望む選択なのか。
全ての人を救うことはできない以上、我々は「共同体の意志として、誰を殺すべきか」という選択を迫られている。
殺す主体は誰か。
言うまでもなく、私でありあなただ。
どちらを選択しても、私たちの手は血で汚れることになる。
最後にもう一度問う。
自粛は正義ですか?
ついでに宣伝。先日、トロッコ問題の究極の形態である「臓器くじ」をテーマにした短編を書きました。
「誰を殺すべきか」というテーマになってますので、よろしければご覧ください。
年末ジャンボ宝くじ(一等心臓)
新型コロナで殺される人たち 台上ありん @daijoarin
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