第54話

「……匠、その、大丈夫なのか?怪我とか……」


レース後、すぐに隆二と秋山さんが来て声をかけられた 隆二も秋山さんも予選は余裕で通過している


「……うん、大丈夫 なんというか、上手く体を動かせなかった 初めてだよ、こんなこと」


「リレーの時とは別人すぎたぞ、燃え尽きたとかそういうのじゃねえよな?」


「……わからない、けど大丈夫 準決までには修正するよ」


そこへ、予選を俺の後の組で走った品田さんが現れた 俺を睨みつけて


「なんだよ、リレーの時とは別人じゃないか マグレか?あの凄まじい走りは」


「……」


匠は何も言い返せなかった 実際こんな無様な走りをして、自分が情けなくてしょうがない


「なんでもいいから準決までにはどうにかしろ、そうでないと何も面白くねぇ」


そう吐き捨て、品田さんは去っていった


「喝入れられちまったな けど俺もあの人と同意見だ 頼むぜ、匠」


「はい……」





準決勝前のアップ、渚に付き添ってもらった 修正点を見出してもらうためだ しかし……


「……フォームには何も修正点は無いね、多分、気持ちの問題だよ 自分の中で整理ができてないんだと思うよ リレーの時の感覚、良すぎたんだね」


「そうなんだよな……自分でも何が起きたのか、あの時の走りは何だったのか、考えがまとまらないまま走った結果だ……そして、まだ整理がついてない」


こんな状態では、準決も同じことをしかねない そうなると、もう予選のようにギリギリ通過もできない


「……確かに凄かったもん、あの匠の走り……少なくとも日本の高校生のトップレベルの走りだった」


「……」


そこへ、同じくアップに来た秋山さんと隆二が話しかけてきた


「なあ匠よ……そんな難しく考えなくていいんじゃねえの?」


「え……?」


隆二に言われた そこに秋山さんが続く


「ごちゃごちゃ考えすぎだ なーんにも考えずにただ100m走るだけでいいじゃねえか 11秒もかからない間しか走らねえんだぞ?みみっちいこと考えてる間にレースなんて終わっちまうんだから、それなら頭空っぽにして全力で走るのが1番楽だぜ」


2人に言われてハッとした そうだ、今まで俺がベストを出してきたレースではそんな細かいことを考えちゃいない 全力で走る、そのことだけ考えてればよかったんだ


「ありがとうございます 多分、いけます」


「楽しみにしてるぜ、匠」





それから1時間後、準決勝が始まる



作者より

いやーまたこんなに開けてしまうとは、自分が情けないです 仕事が忙しいのは事実ですが……

こんな作品ですが、時間かかっても楽しみにしてます!という人はコメントどしどし載せて頂けると励みになります どうぞよろしくお願い致します

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

風と恋 〜最高な幼馴染と頂点を目指す〜 ヤマト @yamato0922

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ