葉桜の君に

えーきち

― 序 ―

 桜子は桜が嫌いだった。


 空の青。目に染み入る新緑と、入り交じる桜色。

 城跡の大きな葉桜を見上げ、胸いっぱいに息を吸い込み目を瞑る。

 瞼に浮かぶ葉桜に彼女の姿を重ね見て、細くゆっくり息を吐く。


 あの日あの時君がいて、俺はどうしようもなくガキで。

 季節ごとに変わっていく桜の木に、心の形をなぞらえてみる。



 葉桜の君に……

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