第2話 (救急隊員到着の2時間前)
今日は月に一度のお花見交流会。
飲み食べ放題2800円のミニライブ付きイベントだ。
店外テラス席の真上には、今年少し早咲きの桃の花がちょうど満開を迎えていた。
飲み食べ放題とは言っても、飲み物食べ物はあらかじめ各テーブルに全て配膳準備をしてお客様に勝手にやってもらうという完全フリーバイキング方式。
店主の私達(マスターと私)は会が始まるとお客様に楽しんで頂くためにミュージシャンに早変わり。
演奏側に回らなくてはならない。
そのためのオードブルを作るため、ランチが終了した午後2時頃からマスターが厨房に入った。
この店舗は居抜きで借りた。
もともとは、生まれ育った自宅をオープンテラスのあるお洒落なカフェに改築したオーナーさんが、3年余りアフタヌーンティーを楽しめる喫茶店として営まれていた。
ご事情により閉店となったこの素敵なお店を不思議なご縁あってお借りすることとなり、昨年の12月28日プレオープンに至った。
28日という日にこだわったのは、マスターの誕生日という事もあるが、マスターが昔から仏像オタクでお不動様大好き人間。28日は不動明王様のご縁日でもあるからだ。日本中のお不動様が奉られている神社仏閣では盛大な法要式典祭りが執り行われる大切な日でもある。
開店準備はまだ不充分ではあったが、なんとかオープンにはこぎつけた。
それからちょうど3ヵ月。
店内に20人、外のオープンテラス席にも詰めれば15人ほどのお客様が収容出来るスペースがあるこの店は、そこそこお昼時には混雑する。
昼のランチとアイドルタイムのカフェ…
そして、お土産品も観光地並みにところ狭しとあらゆる隙間に立ち並ぶ、少し変わった店内となった。
やっとお客様の流れも掴み仕事にも慣れてきていた2月の後半、新型コロナウィルス騒ぎでお客様の足並みに暗雲が立ち込み始めた。
それでも2月のお花見交流会は30名近い参加者の方々で賑わった。
店外テラスから見える庭先の河津桜が満開だったせいもある。
そして3月28日(土)のこの日…。
二度目のお花見交流会を決行しようとしたこの運命の日。
マスターが厨房で唐揚げなどの揚げ物の準備を始めた頃…店内テーブルをパーティー仕様に移動させていた私は、厨房内にふとマスター以外の人影を感じて咄嗟に厨房を二度見して眼を見開いた!
(確かに…マスターの横に今、人影が!)
でも、はっきり視線を向けると、もう
ソコには誰もいなかった。
一瞬の出来事だったので、何かの勘違いかと自分の目を疑ってもみたが、それは人影というよりは…かなりハッキリとした[人]であった。
年配の…(年の頃からいうと60代~70代くらいの)髪の短い男性だった。
顔は長四角で中肉中背…その年代の男性にしてはスマートで長身の方なのかも知れない。
白っぽい…板前さんのような仕事着を着ていた。
確かに…マスターの隣1メートルくらいの間隔を空けたところに立っていた。
そして、私の方をじっと見ていた‼️
もし私が似顔絵を得意とする人なら
ハッキリとその表情が描けるくらいに…リアルにその男性は厨房の左片隅に立っていたのだ!
霊界への小旅行 天眼流 龍美 @s19
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