霊界への小旅行

天眼流 龍美

第1話 (お花見交流会当日の出来事)

3月28日(土)

午後4時28分28秒…

缶ビールを片手に店外のテラス席に移ろうとした瞬間、私は突然の激しい目眩に襲われた。

いえ、最初は目眩などとは思わず、かなり大きい地震だと私の意識は認知して、床に崩れ落ちそうになった身体を起こそうと全身をふるい立たせようとしたが、

左半身に力が全く入らない。

立ち上がる事が出来ないのだ。

(そんなバカな…)

と思うが早いか否か、今度は左手左足に軽い痙攣が起き始めた。痛みは全くない。ただ、意識が少し遠のき始めた感覚があった。

(救急車…)

直ぐに頭をよぎったのは、良く世間で聞く話…突然、脳の血管が切れて脳内出血。こういう時は一刻も早く病院へ行かないと!

直ぐ側にいたマスターに

「救急車…かな。救急車、呼んで」

と言ったつもりの言葉も、少し呂律が回らなくなってきていた。店のマスターは

近くにあった椅子に私を引きずるようにして抱きかかえ座らせてくれた。

そして、すぐさま119番通報をして間もなく救急隊員が駆け付けてくれたのだった。

 その日はお店で月に一度企画をしている[お花見交流会]という名のパーティーの当日だった。

実は私とマスターはミュージシャンである。バンド(とは言ってもメンバーはギターとボーカルだけのシンプルな二人バンドだが…。)を結成して丸10年になる。

その音楽関係の方面で、お花見交流会を楽しみにして下さる方々も多い。

新型コロナウィルス対策で人が集まることへの自粛要請が東京都から発信されてはいたが、そんな状況で参加者も数人と少なかった事や、又、たまたま店のマスターの誕生日という事もあり、イベントは決行すると決めていた。

パーティーの開演は午後5時。

始まるまでに30分ほど時間のゆとりがある。

音響効果やマイクの設置も準備OK!

お料理もあらかた出来上がりオードブルも揃ったので、

(さぁ、今夜も頑張りましょうね)の意味も込めて、お客様が来店するまでの間にマスターのbirthday乾杯を一杯だけしようということになった。

そんな矢先の事だった。

そしてビール片手に店外テラスの方面へ

向かおうとした瞬間に私は倒れたのだった!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る