騎士道物語の読み過ぎで物語と現実の区別がつかなくなった平民騎士のミリアーネと、同期入団の騎士サリア。
2人を中心とした女性騎士達の(一部騎士の頭が)ふわふわした騎士団の日常をメインにした物語です。
物語と現実の区別がつかなくなった人は、大体根拠もなく自分が主人公だと思い込むものですし、ミリアーネも騎士団入団まではそう思っていたものの、物語開始時点では自分に特別な力がないと気付いています。
そこで現実を見るのではなく、それなら自分は十把一絡げに殺されるモブキャラなのだと判断した彼女は、モブあるあるの死因を回避するために自分を鍛え、小説の知識を活かそうとする(※特に活きる場面はない)。
いわゆる「読んでいた小説の世界に転生した」のではなく、現実と物語の混同です。やばい人です。やばい人なんですが、愉快で、可愛く、時々かっこいい。
日常コメディのフォーマットではありますが、舞台が騎士団なので命懸けの任務もありますが、物語に憧れて抱いた正義感は、自分が「モブ」だと理解しても消えることはない。
となれば、それは確かに「小説の知識で運命に抗」っているのかも知れません。
日常ものが好きだけど、ストーリーの起伏も欲しい……、そんな人には特におすすめ。
騎士道物語を熱愛し、異世界転生物語に感化されたミリアーネは、自分も特別な力を持つ主人公なのではないかと信じて育ち、ついには騎士へと成り仰せた。が、前世の記憶を持たず、特別な力に目覚めもしないことから、彼女は現実を直視する。自分はモブキャラなのだと。あっさり死んでしまわないため、努めていかなければならないのだと。
そんな自覚から始まるミリアーネさんの物語、ジャンルとしては(女子騎士の)日常ものになるのですが――「モブキャラ」というキーワードが本当によく生かされているのが最大の特徴です。“モブだから”という展開があり、“モブだけど”という展開もある。モブという言葉の意味をひとつに絞らないことでキャラの個性を最大限に生かし、小さな日常話の幅をぐぐいと広げているのがすばらしいんですよ。
自覚系モブキャラが小さな努力を重ねて行き着くゴールはいったいどこなのか? 今後の更新が待ち遠しい一作です。
(「こんなときだからこそ笑いと元気!」4選/文=髙橋 剛)