主人公が両親達の許を離れて成長していくと言う従来の物語を彷彿とさせる展開でありながら、主人公やヒロイン含む主要なキャラクターが人間でないと言う比較的特異な設定と、それに関連する描写のお陰で全く見飽きない新鮮な世界が構築されている。
まだ数話しか拝読していない現状で、これほどのインパクトを与えられるのだから、文章と言う力にはつくづく感動させられるが、しかしそれは作者の想像力と文章力があってこそ真価を発揮するものであり、その点でこの作品は感嘆に値するものであると私は思う。
これからも拝読させて頂きたい一本であることに間違いない。
【物語は】
混沌とした場面から始まる。ある少女が命を狙われていた。追手から逃げようとするものの、立ち向かう力もなく追い詰められ、命を奪われてしまう。
果たして、これは夢なのか現実なのか?
それとも未来を予見しているのだろうか?
【世界観・舞台の魅力】
冒頭から始まる場面で、”黄緑色の血”というキーワードが出てくる。
あるショッキングな場面を通し、この物語の世界観や重要な人物の容姿なども伝わってくる。この場面で分かること、少なくともここに出てくる人物たちは自分たち人間とはどこか違っているという事。そう、彼らはあらすじにもあるように、”地球と異なる進化を遂げた存在”なのである。この部分で出てくる”ホンモノ”は一体何を指しているのだろうか。気になる伏線である。
用語補足:(web調べ)
自然選択とは個体間の適応度(生存や繁殖)の差によって生じる過程。その差がたまたまランダムに生じたものではない場合。
自然選択による進化のためには、 淘汰(選択)、変異、遺伝の3つが必要。
物語の流れがとても巧い為、自然に登場人物が紹介されていく。この場面で出てくる少女は、主人公の一人なのだろうか。それとも主人公と共に戦う仲間の一人なのだろうか。あらすじに書かれている”彼らと協力して、コーカスを暴き倒せ!”という一文から考えると、”彼ら”以外に誰かがいるのではないかと考えてしまう。しかし現時点では(この部分の文を書いている時点の拝読ページ)プロローグの段階の為、答えが出るのはまだ先のように感じた。
本編に入ると、世界観について明かされていく。
作品オリジナルの設定であり、最も重要である殻人族についても、ある少年の危機を通し、どのような生体を持つ生き物なのかが丁寧に説明されている。
どんな進化を遂げたのか。どんな部分が人間と違うのか。とても不思議で面白い設定だと感じた。
(設定についてのネタバレに関しては作家さまから、個人的に許可をいただいております)
【登場人物・物語の魅力】
舞台の設定がしっかりしてるため、分かりやすい物語である。作品のはじめのの方に世界観や設定について詳しく描かれているが、オリジナル要素が多い為、とても好奇心を刺激される。しかもつらつらと説明が入るわけではなく、要所要所で説明されるため、覚えやすく納得もしやすい。
彼らの敵となる存在はどうやって産まれたのか。
その経緯について語られているが、これは現実の世界でも十分に起こりうる”勘違い”によるものだと思われる。
その為、この物語で描かれている登場人物たちが”人間ではない”にも関わらず、共感しやすかったり、想像しやすかったりするのではないかと感じた。
武器が体の一部。
これは己の身体自体が鞘と考えると、とても面白い発想だと思う。手に持って歩く必要もないし、身体につけておく必要もない。必要な時に自分の意志で取り出せばいいのだ。しかも全ての殻人族に、備わっている、祖先から受け継がれたもの。この武器についての設定も、とても面白い。独創的である。
冒頭の少女と少し変わった能力をもつ主人公との出会い。どのように出逢うのだろうかと思っていたが、出逢う場所がとても自然な形である。出逢い方は少し変わってはいるが。ここで思うのは、主人公は田舎者で世間知らず。冒頭の少女は都会育ちもしくは現代っ子というイメージが近いのかも知れない。二人はある場所で出逢い、話をすることで地中で生活していた者と森で生活していたものの文化や生活の違いが明らかになっていく、ナチュラルな話の展開。虫からの進化であるという事も随所に活かされており、作者の拘りが詰まった作品であることが伝わってくる。
【物語の見どころ】
全体的に世界観や舞台の設定について、とても凝っており、良く練られていると感じた。子供と大人の違いや、武器について。進化の仕方や、生活や食事に至るまで”虫”からの進化であることが分かりやすい。
好きでなければここまでモチーフとして扱えないと思う。
それくらい活かされている。
そして、作品の下記にある作品の設定補足。用語など。図も入れたりし分かりやすく補足されている。虫についてよく知らない人でも分かりやすく、納得のできる世界観だと思われる。
主人公と冒頭の少女について。
どちらも個性的。主人公は天然で世間知らずであり、屈託がなく素直な印象。それに対し少女の方は、言いたいことをはっきり言う、少し気の強い子という印象である。一見性格が合わなそうにも感じるが、物語が進むにつれ少女の性格に好奇心旺盛な部分も垣間見え、案外うまく行くのではないか?と思ってしまう。読了部分はまだ序盤の為、これから二人の仲がどのように変わっていくのか想像するには早計かもしれない。
あなたも是非、お手に取られてみませんか?
オリジナル設定の部分がとても良くできていて、伏線に感じる部分も多々あります。少女との会話の中で主人公は、父に教わった鍛える方法が”根拠のない話”だと知る。しかしそう方法により、強さを実感している彼はどうにも納得いかない様子。これはなにか有るのではないかと、ワクワクします。
この物語の先はどうなっていくのか。
果たして彼らにとっての脅威を、倒すことことが出来るのか。
その目で是非、確かめてみてくださいね。お奨めです。
昆虫が人間のように進化した『殻人族』の生活する世界線のハイファンタジーです。
主人公の少年は、地中から世界を知るべく地上の学校に入学するのですが、そこで出会った少女とトラブルになり、話が進んでいきます。
殻人族は、昆虫の名残が残った部位を、己の武器として変化させ、戦います。
それがまた、個々の性格や能力が出ていてカッコいい!
また、主人公『アトラス』の出生についても、少しづつ謎が深まってきます。
その伏線が少しづつ紐解かれていくのが、王道冒険ファンタジーらしい醍醐味。
果たして、主人公らの旅路の果てには、何が待っているのか?
絶望?
破滅?
——それとも、希望?
ふーみん様の昆虫系ハイファンタジー、ご一読くださいませ!
この作品のテーマから分かるように、ありきたりなファンタジーとは全く違う、
先行者のいない完全オリジナルテーマという印象を受けました。
作品序盤では世界観と登場人物に焦点を当てたシナリオで、
30話前後のタイミングからはファンタジー戦記の本領発揮と言わんばかりのテンポの良いバトルシナリオが多く取り入れられています。
昆虫同士のバトルと聞くと、世代的に刺さる作品が脳裏に浮かび、懐かしさを感じるのですが、人のなりをしていることから、バトル要素の展開の幅に厚みが増し、
この作風だから楽しめるという要素もしっかりと詰まった作品です。
私はこの作品、全く類似作品がないということから完結まで応援をしたいと思う素敵な作品に思いました。
ぜひぜひ、少しでも気になった方はご一読ください!