2 十一月のよく晴れた朝に その3
十五分後くらいに音楽室にやってきた
ピアノの音色って
「およ。ムサオはあんだけクラシックの曲を引用しまくってるのに、ピアノには全然
「ええ、まあ……ちょっと
あと、クラシックなら著作権的にどうこうっていう
「ピアノだって、高校に入るまではエレキしか
「電子ピアノも
先生が言うので
音楽準備室にある電子ピアノで、実演してくれた。スカルラッティのソナタを、最初は
「ね?」と先生は
「……そりゃまあちがいますけど」と
「音の
「ううん……でも実際にちがうのは音の強さとか重ね方とか……」
「どう聞こえたかがすべてじゃないのかな? 音楽ってそういうもんだよね?」
先生はにやにや笑いながら
「グランドピアノならもっと差が出るよ。ダイナミックレンジも広いし
ダイナミックレンジというのは音の強弱の
「あと、箱がでかいからねえ、雑音もそのぶん大きく
「雑音ってのはなんですか。ミスタッチのことですか?
「ミスなく
そう言って先生は電子ピアノの電源を落とした。
「ただ
「へえ……全然気にしたことありませんでした。ていうかそんな音、
「それをできる限り減らすようにピアニストは日夜努力してんのさ」と先生は笑う。
その程度のことも知らなかったのだから、
「ただ雑音っていっても感じ方は人それぞれでね。
「……
この人よく音大卒業できたな。色々信じられないよ。
*
その夜も、
ヘッドフォンをかぶってベッドに
大切なのはその事実だけだ。
起き上がってヘッドフォンをむしり取る。音楽は
ヘッドフォンのブリッジを
引きずり出してやる。算段もある。
PCの前に
*
「──ん、ふぁっ?」
変な声が出た。顔を上げると目の前に
しかし頭が冷えてきたところで、
「な、な、なんだよっ?」
「毎日放課後は音楽室に
「それは、ええと、どうもご心配をおかけしまして」
「あの子4組の」「
「音楽
なんかよくわからんけど話が広がってるぞ?
「毎日顔を合わせるたびに
「
「ま、待ってってば! そんな話してないよ!」
「ごめんなさい」と
「そんな言い
「ほんとうに?」と
「なんで
「言い
「くっ……」
こんな形で
「……ひわいなぴあの、ひわいなぴあの、ひわいなぴあの、ひあいなぴあの、ひわいなひあの、ひわいなひゃいの、あ、あれ」
「ほら、
「いやそうかもしれないけど!」
「
根も葉もない
「なにしにきたんだよっ?」人気のない階段の
「心配で見にきたって言ったでしょ。そんなに信じられないの? わたしがこれまでに
「何度もあったよ! 最新の例はほんの二分前だよ!」
「そこは見解の
「とにかく心配で来たのはほんとうだから。なにかあったの?」
さて、どうやって切り出してやろうか。
「おまえを
「わりと信じる。
「閉じこもってねえよ、学校は来てたよ! ていうかあっさり信じてもらえるとかえって反応に困るんですけどっ?」
「じゃあ変なポーズつけて変な口調で
おっしゃる通りですね! 泣きたくなってきたよ!
「ええと、うんまあとにかく」
------------------------------
試し読みは以上です。
続きは好評発売中の『楽園ノイズ』でお楽しみください!
------------------------------
楽園ノイズ 杉井 光/電撃文庫・電撃の新文芸 @dengekibunko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。楽園ノイズの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます