第6話 俺の父ちゃんプロゲーマー
月曜日。
ヒロシは憂鬱な気分で登校の準備をしていた。
ユウイチ、仕返ししてくるよなあ。
まあ先に蹴ったの俺だし。仕方ないか。
案の定、ヒロシの机にユウイチとその仲間たちが待ち受けていた。
「よー、ヒロシ。お前の父ちゃんプロゲーマー!」
相変わらず、ワンパターンの煽り文句しか言えない奴だな。
ヒロシはユウイチに
「そこ、どいてくれる?座れないし。」
と冷静に言い放った。
「ねえ、父ちゃん遊んでお金貰ってんだろ?いいご身分だな~。俺もなりて~。」
ユウイチは煽りを止めなかった。ユウイチの仲間もくすくす笑っている。
ヒロシはユウイチの襟首を思いっきり掴んでぐいっと引き寄せた。
「あのさぁ!プロゲーマーって、すっげえ大変なの。毎日何時間も練習すんの。同じことばっかり。何時間もさあ!お前にできんの?」
自分でも想像以上に声が大きく出てしまい、ヒロシもびっくりしたが、ユウイチもいつも冷静なヒロシが大声を上げるので目を丸くして聞き入っていた。
「それに、会場だって色んな人が協力して作ってるんだぜ。そんな中、皆に気を遣って、リハーサルだって何時間もあるし、本番は何百人、配信いれたら何万人が見てるんだよ。そこでゲームできんの?お前。」
少し冷静さを取り戻したヒロシは淡々と語った。
「それが出来るなら、俺の父さん、バカにしていいよ。」
そう言ってランドセルを机に置いて、静かに着席した。
ユウイチは、フンっ!と顔を背けて自分の席へ戻っていた。
こんなこと言うつもり、なかったんだけどな。おかしいな。
今まで感じたことのないような、胸がムズムズする不思議な感覚がした。
朝礼に備えて準備していると、また誰かが話しかけてきた。
「ヒロシ君のお父さん、プロゲーマーなんだよね?」
小学校に入って早5年。ヒロシはこの質問にウンザリしていた。
「昨日の2020年夏の陣大会、優勝おめでとう。すごいかっこよかったね!」
だろ。僕もそう思う。と、ヒロシはニヤついた。
お前の父ちゃんプロゲーマー ゲームセンターお松 @nazuna_0808
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