「化け物」の世界を旅しよう。その世界の価値を見るために。

レビュー執筆者:戸﨑亨


主役は怖い顔のおじいさんと『化け物』となった少女。
この世界での『化け物』とは、化け物病と呼ばれる疫病にかかった人間のことを指す。腕や足など、体の一部が大きく変形し、見目が醜い姿へと変化する その上、悪化すると人を襲うこともあるらしい。おじいさんは人間だったころの記憶がない『化け物』少女と出会い、世界を見て回りたいという願いを聞き入れてから2人の旅は始まった。

今回紹介する作品は短編集となっていて、最初の1話を読んでからは、基本的にどの話から読んでも話の内容が分かるようになっている。
1エピソードは長いものでも15分あれば読めるほどに短く、それでいてその世界観に没入できた満足感を得ることができる。

主役のおじいさんは、先ほど怖い顔と言ったが読み進めるほどチャーミングな一面をのぞかせる。対して『化け物』の少女もまた、素直であるが故に、この老人との相性がそこそこ良く、奇妙な組み合わせ2人に始めは見えたとしても、そのうちそれが自然になっていくこと間違いなし。

そしてエピソードごとに出てくる『化け物』との掛け合いは、この話に一番の面白味となっている。
主役の2人が旅の中で、見た目、正確、特徴、様々な『化け物』と出会い、交流をしていく様子はとても微笑ましい。
一方で、作中では人間が化け物を見ると強制的に恐怖を駆り立てられるため、人間によって残酷な運命を迎える『化け物』もいる。そんな残虐な一面も垣間見えるのもまたこの作品が単なるほのぼの作品ではないことを印象付ける。

数々の出会いを体験できるこの作品を見ればきっと読み手のあなたも、一緒にこの世界の全てを見て回る旅人の気分になれるだろう。

ぜひ読んでみて欲しい作品である

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