本来、相容れない存在である鬼と人の和風ファンタジーです。
人のヒーローと鬼のヒロイン…設定に従えば悲恋、応仁の乱の後の京都が舞台という設定を足せば、暗いダークファンタジーを想像してしまうのですが、確かに本作、物語のトーンは暗めですが、そこに篝火が焚かれているような明るさを感じられます。
あらすじにある通り、鬼退治、人食い鬼と、昔話、お伽噺の悪役に欠かせない鬼ですが、同時に温厚な鬼の存在も、私たちは昔話に出てくる事を知っているはずで、だからこそヒロイン・朱音の存在を受け入れられると思います。
明るい点、抜けている点などから、強大な力を持っていても、それは恐ろしさと同時に心強さも感じられます。
あらすじにもある通り、鬼と人間というのは基本的に敵対関係として今まで書かれてきました。『人喰い鬼』、『鬼退治』という言葉がある通り、お互いがお互いを殺し合うような関係性です。
しかしこの作品。鬼×人間が書かれています。それも、昔の日本(応仁の乱後)を舞台にしているために、妙なリアル感・スリルを味わいながら読み進めることができるのです。本当に目の前に鬼がいるかのような描写がされ、まるで一つのドラマを見ているような気分です。
また、鬼という残酷なイメージがあるキャラクターの中にも、どこかほのぼのした感じがあり、どこか圧を感じるような印象を跳ね返してしまうような柔らかさが存在しています。
異類×人間が好きな方、ぜひ読んでみてください。
時は室町時代、応仁の乱 から少し後の京都が舞台の物語です。
(年代的には1480年前後かと思われます)
混乱した京都には人と相容れない〝鬼〟が存在していた。そんな世界で〝人間様〟の営みに興味津々な鬼の少女と傭兵の青年が出会いを果たす。
しかし、傭兵の青年には鬼と関係する悲しい過去が。
果たして鬼と人間は共存できるのか!?
良く調べられた上で描かれているのだと感じさせられる地の文と、室町時代ならではの描写が和風ファンタジー好きにぶっ刺さりました。
人喰い鬼が登場しますが、ヒロインの喋り方がとにかく可愛いのでシリアスの中にほっこりがあります。
人外×人間の異種族間の絆が好きな方は一見の価値アリです!