文の精巧さはいうまでもありません。この作者様はけして期待を裏切らない。このお話の魅力はなんといっても登場人物の性格。同じ筋から話を作るものですが、一味違った桜子がいます。キレのいい、失礼でなければ鋭利な刃物のような美しさの桜子。ラストにも注目です。
桜のありのままはどこにあるのだろうか?作られた桜と本当の桜。その姿はどちらも桜であって、それは客観じゃなく主観で、花があってもなくても間違いなく桜なのかもしれない。花が花であるように、桜も桜以上でも以下でもないのだから。いい話を読ませて頂きました。心地よきかな。嗚呼、心地よきかな。
桜をテーマに、桜子たる人物の雄々しさ、潔癖さ聡明さが際立つ。ひとは孤独を超え、理論を超え、神秘を生きる。たいくつはさせない! さあ、はじめよう! 物語を!