第15話 俳句四季新人賞落選作「冬館幻想」
夜の館数多の
物憂げな女雛となりし兄の紅
悪食の美徳賛美し
廃都に猫集ひたり小晦日
寒薔薇地獄に咲ける魂ひとつ
水仙やナルキッソスの裔なる兄
文月の死者手毬唄口ずさみ
廃寺にて
薄野に果てたる母や鬼女となり
蚕室に妹を飼ひたり月は満つ
魂吸ひし五月闇なる人形や
五月闇夕化粧憂き紅を差し
日傘差す妹の背中の蝶の刺青
夏至過ぎて骨格標本数へたり
なつかしき黄泉で洗ひし髪を切り
温室の奥の魔物は夏眠り
寒卵兄も孵るや手中より
逸書なる神の屠りし兎かな
廃村の雪の下なる七つの子
初雪を予祝として神めざめ
人形や数多窓辺に冬館
静物画廊下に満ちて冬館
【句集】冬館幻想 雨伽詩音 @rain_sion
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