夢見る龍は人々の記憶の欠片を胸に、星へと至る。

 とても素晴らしい作品です。群像劇ながら破綻を見せず、最後まで余韻を残す。作者様の時間軸と場所軸に対する強さが、まざまざと見せつけられた一作でした。この作品を読まなかったら、後悔していたと思います。
 物語が展開される場所は、籠根町という架空の町だ。その町では竜の卵を祀る神社があり、年に一度、龍神祭が行われている。
 そこで観光客向けにドラゴン饅頭、約して「どらまん」を売る女性。それがこの物語の最初の主人公だ。そこに不思議な雰囲気をまとった旅の女性が現れ、どらまんを大量に買っていく。女性はこの町の言い伝えに興味があるらしい。
 この町の神社では、男の子と女の子が、神隠しに遭っていたのだ。
 第二の主人公は籠根町育ちの男性教諭。その男性教諭は、神社のご神体である龍の卵にかかわる「心霊写真」を友人に見せに行くのだが――。
 それぞれの主人公たちが、それぞれの立場や想いから、自分の体験談を語り、そこには必ず旅の女性がかかわっている。
 そして最後に明かされる切ない真実。
 全てのピースがそろった時、カチリと頭の中で音がして、この物語のタイトルが体の中に降りてくる感覚でした。
 
 是非、是非、ご一読ください!

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