第45話 最終話 新リーダー

「あの、マサムネさん。キルケーさん、あのまま放って置いて良かったんですか?」


 あの後、レオナ達により、何とか魔物の大群は片付けられた。

 フラミーの回復魔法で傷付いた体を癒し、俺、サクラ、レオナ、フラミーとロミで、箱庭に引き返すため、ダンジョンの一層を歩いている。


「あぁ……同行者の彼女が見ていてくれると言っていたからな。手負いでも、奴なら二人でも楽々脱出するんじゃないか?」


 謎の女は中々に聞き分けがよく、俺達に危害を加えること無く、見送ってくれたのだ。

 まぁ、あの場で俺達全員を敵に回す、なんて選択肢は端から無かったのだろうが──。


「──そうやない。生かしてていいんか? って言ってんのや。またしつこく追いかけ回してくるで、あいつ」


 なるほど、言いたいことは良く分かる。彼女の言い分はもちろんだ。


「……私もそう思う。ロミはどう?」


 フラミーの問いかけに、ロミが「ワンッ!」っと一言吠えて見せる。


 彼女もレオナの意見の賛成みたいだ。

 キルのやつ、元パーティーメンバーにここまで嫌われるとは……少し可哀想にも思えるな。


「……ほら、ロミも言ってる」

「そ、そうなのか?」


 犬にまで……哀れだ。


「まぁ、奴があぁなったのにも、俺が原因とは言いきれないしな」

「いやーマサムネ。甘いで! そりゃー甘い! アイツはしつこいでーホンマしつこい!!」


 って、本音は自分が追いかけられるのが嫌なだけ……なんて下心は無いだろうな?


 そんなことを思っていると突然、俺の左手に何か温かいものを感じた。


「──ん、どうした? フラミー?」


 どうやら、フラミーが俺の手を取っているようだ。

 彼女も可愛いのだが、前髪で目が見えない……何の意図でこんなことを?


「こ、こらフラミリア! ずるいで」

「……まだ、反対側が空いてる。こっちは譲らない」


 フラミーの言葉を聞き、レオナは未だかつて、見たことの無い華麗なフットワークで俺の右側に回り込む──しかし時すでに遅かった。


「な、なんでや!?」


 フラミーが手を繋ぐのを後ろから見ていたのだろう。

 そそくさと俺の隣に来て、サクラが俺の右手を握りしめていたのだ。


「えっ。レオナ先輩が可愛い反応するんだろうな、って。それに今回は私、かなり活躍しました──繋ぐ権利を主張します!」


 っと、全くもって意味のわからない揉め事を起こしていた。


「おい落ち着け! 魔物が現れたらどうする、隊列を乱すな……」


 しかし、今は俺の意見を聞き入れてはくれないらしい。

 俺の左手を握る、フラミーの手に力が入る。


「……むっ、知らない間に、敵増えてる」

「て、敵ってフラミー……サクラは仲間だよ。後、痛いから」


 そんなやり取りをしてる中、俺は一つの案を思い付く。


「そうだレオナ、君に頼みがあるんだが」

「なんや、言うてみ」


 俺はサクラと繋ぐ右手を上げた。


「このサクラを──君達のパーティーに入れてくれないか?」


 その提案に、レオナは目を丸くさせる……まるで、驚いているかの様にだ。


「何言うてんねん、リーダーはマサムネや。それの決定なら、文句なんか言えるわけないやろ」


 ……っは? リーダーが俺? レオナのやつ、一体何を言って。


「い、いや。俺がリーダーなんて不釣り合いだろ……そもそも俺は君達の足を引っ張ってだな。だから、パーティーも……」

「──マサムネがやらんなら、うちはパーティーから抜けるで!?」

「……私も、マサムネじゃなきゃヤ。そんなパーティー興味ない」


 この二人と来たら……言い出したら聞き分けてくれないんだよな?


「──って言ってますけど、どうしますかマサムネさん」


 これは……一本取られたと言うべきなのか?

 まったく。そんな事言われたら、断るすべなどないじゃないか。


「お前達……」


 本当のところ、このパーティーに戻るつもりは無かった。

 逃げてしまった俺が加わっていい理由など無いからな。


 なのにこんなこと言われたら……泣きそうになるだろ?

 オッサンは人一倍涙腺が弱いんだ、勘弁してくれ。


「さて、話もまとまったようやし! リーダー、早速挨拶せぇや」


 ──なっ!?


「きょ、拒否権は無い……のか?」


 三人の顔を見たら分かる。コイツら、楽しんでやがるな?

 よし、良いだろう。オッサンの生き様を見せてやる──!


「おほん! では僭越せんえつながら……」


 しかし俺の咳払いを聞き、何故か三人は笑い出した。

 それはそれは、大変楽しそうに──。


「──な、何がおかしい」

「いやな、マサムネむっちゃやる気やから、こりゃ長くなるなって思っただけやねん。手短に頼むわ」


 どうやら雰囲気を察するに残り、二人も同意見の様だ。


「て、手短に……だな?」


 このメンバーで冒険か……きっと、華やかで、楽しく、トラブルに巻き込まれたり、ドキドキしたり……そんな毎日が待っているのだろうな。


 ──そうだな、こんな時は。


「ごほん! 古来より、このような場面おいて、必ずしも使われていた台詞があると、とある文献で読んだ事がある──」


 これなら、文句は言われまい。

 短くて、ためになり……何より、今にぴったりの言葉だ。


「それはだな……」

「「「それは?」」」


 俺の顔を覗き込む三人に、俺は笑顔を見せる。そして、大きな声で答えて見せた。


「──俺たちの戦いは、これからだ!」っと……。


           Fin

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魔剣が作れるおっさんは、今日も魔力が帯びた剣を生み出したがらない。 リゥル(毛玉) @plume95

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