第15話
「雑誌に載せてもらったのは、キョーコさんと、あの編集者の人のおかげなのに」
お千代さんと牧場主さんの姿が消えたのを確認してから、山田さんが言いました。
「この牧場にさ、シープちゃんとメリーさんという、元サンデーサーカスのメンバーがいたから、雑誌に載せてもらえたんだって。そうでなきゃ、あの編集者さんと社長がケンカして終わりだったのにさ」
山田さんは地面を軽く蹴りました。
「文句言ったって、何も変わらないよ」
モー太郎さんは、尻尾で山田さんの腰の辺りを軽く叩きました。
「やっと人が入ってくるようになったんだ。減らさないようにしようぜ」
モー太郎さんの言葉に
「そうよ!もっと、もーっとオキャクサン来るようにガンバロー!」
ロバのローバさんが高い声で鳴きました。
「・・・だな」
山田さんが大きく伸びをしました。
「さ、ちえちゃん。もっとお客さん来るように、俺らも頑張って掃除しよっか~?」
ちえちゃんさんが、元気よく立ち上がりました。
「頑張ります!私も、みんなのことが大好きですから!」
オー!
私たちは元気いっぱいに鳴く(叫ぶ)と、持ち場に戻りました。
「うわ、すげー!象がこっちに向かって歩いてきた!」
子供たちの明るい声が、太陽に届きそうでした。
「シープちゃん。お疲れ」
夕ご飯を終え、外でぼんやりとしていると、メリーさんが声をかけてきました。
「メリーさん、忙しいですか?」
とっくに、太陽は一日の仕事を終え、お家へ帰ってしまいました。今は星の間に隠れて月があくびしています。
「そんなに忙しくないよ。ま、前よりは、ちょっと忙しいかな?」
メリーさんは、やさしく私の毛をなでました。
「お千代さんが、メリーさんが一生懸命働いているってほめてましたよ」
私はそう言ってメリーさんに寄りかかりました。
「そうなんだ」
メリーさんは小さく笑いました。
「ほめられるんなら、お父さんにほめられたいな」
「え?」
私はメリーさんを見ました。
メリーさんも私を見ました。
「シープちゃん。今のは、内緒ね」
「はい!牧場主さんとお千代さんには、絶対、言いません!」
私たちは笑いました。
お月様が微笑みながら、その様子を見ていました。
羊が一匹 ~美人すぎる騒動~ たえこ @marimo-suchiko
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