第14話
「あの!」
お千代さんの声に、私たちは一瞬で静かになりました。
「もう、お昼休みは終わっています」
牧場主さんが腕時計を見ました。
「そうだな!みんな!持ち場へ戻れ!おしゃべりの時間は終わりだ!」
牧場主さんが、急に眉を吊り上げ、大きな声を出しました。
「いえ、社長。その前に」
お千代さんが、片方の前足で、牧場主さんを制しました。
「みなさんに、お話したいことがあります」
お千代さんが一瞬、空を仰いだので、私は、2週間、餌の量が半分になると思いました。山田さんが謝ろうとしているのに。
「雑誌に、この牧場のことが取り上げられました。その日から、牧場の見学者が増え、出張牧場の予約や問い合わせの電話が増えています。メリーさんが、一人で対応してくれています」
私たちは、お互い、顔を見合わせました。
そう言われてみると、数日前から、人が増えたような気がしますが、暑くない雨が降らない天気が続いているせいだと思っていました。
電話のことはよくわかりませんが、メリーさんに昨日会ったときには忙しいとは言っていませんでした。
「私が、雑誌社に売り込んだから、皆さんのことを取り上げてもらったんです。私が、雑誌社に電話したから、皆さん、写真撮ってもらったんです」
お千代さんの話を、牧場主さんはうなずきながら聞いていました。
「お客さんが増えているのも、私が、雑誌社に電話したからなんです。皆さんが雑誌に載ったからじゃありません!勘違いしないでください!」
「そ、そうだ。そうだ。お千代がなお前たちの知らないところで、この牧場のためにいろいろと動いてくれていることを忘れるなよ」
牧場主さんが大きくうなずきました。私は、お千代さんに見つからないように、心の中で「あーあ」と言いました。
「雑誌に載ったくらいで、浮かれるなよ。いいな?返事!」
「はーい」
牧場主さんの掛け声で、私たちは一斉に片方の前足を高く上げました。花子さんは鼻を高く上げました。山田さんも、ちえちゃんさんも片手を挙げて返事しました。
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