このものがたり、蠱惑的。

  • ★★★ Excellent!!!

 美は毒を内包するべきなのかと。心を支配するような甘美な毒が。その先に死が待っているとしても、溺れずにはいられないような。

 時は江戸時代、主人公は彫り物師。この男はある種の芸術家なのか、なかなか叶いそうにない願望ではあるけれど、美少年の肌を彫りたいという望みがあります。雪原に足跡をつけたいというような気持ちなのか、刺青の痛みに耐える姿を見たいという歪んだ性癖なのかは曖昧ですが。

 そんな男に望みが叶うチャンスが訪れ、ついに夢を叶える事に。

 美少年が背負う刺青の柄が、到底彼には似つかわしくない題材なのに、恐ろしくも深みのある目が離せなくなる美へ。光が作る濃い影のコントラストに息を呑む事があるように、美に醜というコントラストも人を惹きつけてやまないのかもしれません。

 この物語は、ぞくりとする美が作り上げられる過程を垣間見る事ができます。