人の生命、生きて死ぬということの素晴らしさ、また死なないということへの苦悩。沢山のメッセージが込められたガラス細工のようにキラキラとした美しい作品だと思います。
月野さんは恐ろしさと優しさが同居した文章を書かれる作家さんで、読むたびに自分の物語を綴ることの素晴らしさを教えてもらえます。
そしてこの作品はこの作者にしか描けない物語です。
読み終えて心に残るのは人が人生を歩んでいけることの幸せ。主人公たちは試練を通して自分たちの未来を歩み始めました。絶対的な希望という言葉が今も私の心に残っています。
物語は儚くそして美しい、読了した今心に溢れるのはそっと寄り添う優しい希望です。
彼らの生きる未来が希望溢れるものならいい。
とても心を打つ作品です。
是非読んでいかれてはどうでしょうか?
人付き合いが苦手な、高校生の男の子、都筑颯太。
彼は兄が働く古物商店【オモイデ屋】に向かう途中、一人の青年とすれ違う。彼は颯太が大好きな小説の作者で、そこから運命が動き出す。
死神や天使が出てくるファンタジー要素の濃い作品ですが、激しいバトルがあるわけではなく、描いているのは人と人との繋がりと、暖かな願い。
時に心を暖めてくれて、時に切なさで胸がキュッとなるような文章が、物語の世界観をカラフルに染めています。
個人的なイチオシキャラは、【オモイデ屋】の店主の和嶋時雨さん。
優しい彼は場を和ませてくれて、閉ざされた心を開く天才。読者の心も暖めてくれる素敵な人物です。
颯太は、兄の働く古物商店に売られた一冊のノートを手にする。それは彼の愛読書、【黄昏の慟哭】の作者、ダークティアラが書いたものだった。
そこから颯太はダークティアラに纏わる事情を知っていく事になるのですが、ジャンルにも書いてあるようにこの物語は現代ファンタジー。当然起こる話も、現実離れしたものとなっています。
なのに本作が読む人の心を惹き付けて話さないのは、物語の核となっているのが、「人の願い」という誰にとっても寄り添えるものになっているから、そしてその描写が非常に優れているからだと思います。
事情が明らかになる度に、そして揺れ動くそれぞれの心情を見る度に、時に切なく、時に温かく、まるで直接心に触れてきたように感情が揺さぶられます。
願いが織り成す物語に、あなたも心揺さぶられてみてはどうですか?
可愛い犬やハムスターも出てくるので、動物好きな方は必見です。