第3話 シャルロッテ
嵐の日々が続くかと思ったが、あれから公国側の
「あっ、ゆーじろ~!」
「シャルロッテ様、ご
「ええ、
彼女の名は、シャルロッテ・フォン・ルドルフ公女。レオ大公の妹君であった。駒村は彼女を
「本日はどうされましたか?」
「そうでしたわ!お兄様に頼んでもなかなか声を掛けて下さらなかったから、私が
「…と、言いますと?」
「今晩、悠二郎を我が家にお招きしたいんです。夕食を共にしましょう!」
「はぁ、ありがたいお誘いですが、ご
公爵家とは親身にしているため、彼らの住む
「どうしても、どーしても!悠二郎にお話があるんです!今夜来てもらえませんか?」
必死なシャルロッテに押し負け駒村は誘いを受ける。彼女の乗ってきた車で城へ行き、門をくぐっていった。この城は新設されたものではなく、ドイツから移設されたものであった。壁や窓や内装も全て14世紀のゴシック調の様式で、何度見てもその
大広間に行くと私服姿のレオに出会した。白いローブは着ておらず、シャルロッテがレオも会食に誘うが、やんわりと断られ自室に下がってしまう。着替えのためにシャルロッテは部屋に戻っていった。駒村をダイニングへ案内した時、後で話がしたいと
ワンピースに着替えてきたシャルロッテと公妃であるソフィアと共に
食事中はシャルロッテが話を振ったり盛り上げたりして、とても
「悠二郎、前に水族館へ連れていってくれる約束をしましたよね」
「そうでしたね。
「いつ、行けますか?ソフィア
「そうね。でも、夫はお忙しいと思うから行くとしたら二人だけでね」
「ああ、でも!もうすぐ結婚記念日です!お二人で出かけられてはどうですか?」
「う~ん、話してみるわ」
レオの話となるとソフィアの表情は浮かなかった。シャルロッテは話題を変えて明るく話をする。だが、レオの事はもう話題に出さなかった。
夕食後にシャルロッテの部屋へ伺った。考えてみれば彼女の寝室へ入るのは初めてで少し緊張した。シャルロッテは駒村を椅子に案内し、紅茶と手製のシュトーレンを出された。ふた口食べた後、シャルロッテに相談内容を訊いてみた。
「それで、私にお話とは?」
「その、あの、少し聞きづらい事なのですが、はしたないと思わないで下さいね」
まごつくシャルロッテに注目しつつ、駒村はカップを口元に運ぶ。
「男の方は、その、どうすれば、興奮しますか?」
『興奮』の意味が分からず、アッサムティーを
「どうすれば
「ぶっ…!」
吹きこぼしたお茶は熱かった。むせている駒村に驚いて、シャルロッテは立ち上がり彼の側に近付いた。
「大丈夫ですか?悠二郎!」
シャルロッテは駒村の背中を
「あの、シャルロッテ様。質問の理由を聞いてもいいですか?」
「その、誰にも言わないで下さいね。お兄様達のことなんですけど」
ばつが悪そうに話し出すシャルロッテ。気管の中の異物を落ち着かせ駒村も耳を傾ける。
「そういうことが、あまりないというか、子供ができないというか。まだ、結婚して一年ですし、私が気にする事じゃないんですけど、ソフィア姉様が悩んでて」
「公妃様が?」
「はい、新婚以来してないそうなんです。勇気を出して誘ってみても、断られるとか」
いくら公爵家と仲良くしているからと言って、レオ大公の夜の事情まで相談されるとは思わなかった。いたたまれない気持ちに
「ソフィア姉様、すっかり落ち込んでしまって、自分に落ち度があるのか、それとも心変わりしてしまったのか。もしかして!お兄様が、
「あのっ、シャルロッテ様、それは考え過ぎかと!」
「では、どうしてでしょうか?」
「ん~、大公の心中は私には分かりませんが、子供をつくるのはまだ早いと考えておられるからでは?」
駒村の言葉にシャルロッテは顔を伏せてしまった。勝手な推測だと訂正しようとしたところ、
「やっぱり、そう思いますか?」
「何か心当たりでも?」
「いえ、はっきりとは。でも、お兄様が何か思い詰めているのは、
シャルロッテもソフィアもレオから直接言われた訳ではないが、彼の心境を察していたのだ。
「悠二郎、お兄様に何かあったの?」
シャルロッテが駒村を呼んだのは恐らく、これが本題だろう。だが、駒村は何も答えなかった。
「悠二郎、お兄様を支えてあげて下さい。お願いしますね」
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